ひぐらし祭囃し編覚書~外交官逮捕の演出意図など~

2009-01-11 21:52:38 | ひぐらし
あ~山登り疲れた。疲労で寝てしまわないうちに祭囃し編覚書の続きを書いておくことにする。扱う範囲はカケラ紡ぎまでである。


◎前原圭一はルールZを打ち破る重要な鍵(梨花)
皆殺し編を終えた段階ゆえこの評価は妥当ではあるが、私自身は圭一が惨劇を打ち破れる存在になったことを今もって納得していない。作者は(当初の予定はともかく)罪滅し編以降の彼に「まれびと」としての役割を負わせようとしているのが窺えるが、唐突な感が否めない。より具体的に言えば、「想像力の欠如:「ひぐらし」主人公の評価より」で述べたような圭一の置かれた状況とそれに見合った鬼隠し~目明し編までの振舞が、罪滅し編のそれとうまく接続していないのだ。要するに罪滅し編の「奇跡」の描写が甘いという批判になるわけだが、まあやりたいこと(主張、テーマ)自体はわかるので、それと描き方のどちらを重視するかで大きく評価が変わる部分だろう。


◎入江の背景を初めて知ったような口ぶり(梨花=ベルンカステル)
昭和58年を切り抜けるための駒をそれほど真剣に吟味していなかったことに起因か。ただ、[お子様ランチの旗]における発言などからするとベルンカステルはカケラ紡ぎをしている羽入よりも高い視点からモノを見ているようであり、上記の発言はやや違和感がある。まあこの議論は面倒な上にあまり意味がないと思われるから要点だけ述べると、おそらくプレイヤーの感情を代弁させるための発言なのだろう。カケラ紡ぎで培われた羽入とのシンクレティズムを別の形で強化するのが目的と考えられる。


◎惨劇に学べ
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惨劇に打ち勝つ力は、惨劇じゃない。
暴力に打ち勝つ力も、暴力じゃない。
意思の強さに勝つには意思の強さ。
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これから提示するのは人が死なない話だ、という意思表示。


◎[カケラ屑]赤坂が外交官絡みの事件を解決する描写の意図

1.赤坂の強さを見せ付ける
2.大幅な変化を予感させる(運命を打ち破るようなスカッとした展開)
3.「ブタ」という表現…外国とか嫌いな人にスカッとしてもらう(笑)

1は特に特に説明の必要はないだろう。山狗たちに見せる人間離れした強さ(笑)の伏線である。2は静→動への転換だが、もう少し詳しく言うと惨劇の起こる様を見やりつつ地道に準備を重ねる段階が終わり、その努力が報われる展開(段階)が始まったことを示している。3は誤解を招きそうだが、「ブタ」とわざわざ表現していることに余剰が感じられるため、何らかの意図があるのではないかと推測した。この推測が正しければ、皆殺し編での自衛隊に関する描写などが早い段階から批判されていたのを考慮しての演出だろう。つまり、売春や人身売買をしている外国人外交官を登場させた上でそれを叩きのめすことは、「日本=完全悪」的な描き方はしないし、しようとも思っていないという意思表示だと思われる。なお、カケラ紡ぎ前のノモンハン事件の説明や、本編で赤坂が選挙絡みで戦争の話をしているのもこれと繋がる。


◎羽入顕現のロジック
すでに「カケラ紡ぎの意図と効果」でも触れているが、より広い範囲で引用しておく。

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何も賭けないということは何も信じないということ。
何も信じないということは何も関わらないということ。
何も関わらないということはいないのと同じ。
だから彼女は“いなかった”
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というこれまでの羽入の態度が描写されており、その後で

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何かに賭けるということは、何かを信じるということ。
何かを信じるということは、何かに関わるということ。
何かに関わるということは、いるということ。
だから彼女は今こそ“いた”
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という対照的な文章が描かれている。その姿勢が全体の構造にどのような影響を与えているかはすでに前掲の過去ログで述べた通りなので繰り返さない。ちなみに言えば、ひぐらしPS2版オリジナルの盥回し編における圭一の態度は、かつての羽入のそれと通じる部分がある(そしてそれが否定されている)。以上。

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