ビースターズ:怒涛の第9話をどう評価するか

2019-12-07 17:10:32 | レビュー系

第8話でルイとビルのくだりがなくなっていたので、なるほどあの極めて印象的なシーンは先延ばしにしたのかと思っていたら・・・え、今回も描かないの!?とちょっと驚いているムッカーであります。

 

というのは、それまでのビースターズは生身の暴力こそ出てくるものの、あのシーンで初めて武器が登場(詳細はネタバレのため自主規制)するわけで、明らかに話のレイヤーが変化して読者(=原作に触れた人)の度肝を抜いたと思うのだが、あのマインドセットなしで救出の話をどう描いていくのかしらん?と疑問に思うからだ。

 

とはいえ、それがなくても今回の話は詰め込みすぎの感がある。ハルと風呂の描写、市長と会う場所の変化など、原作からの改変を踏まえると、おそらく時間経過を極めて強く意識した作りにしてセリフを大胆に刈り込み、内面描写も少なめにして一気に話を進めているのが大きいだろう。

 

原作では市長とのやり取りもそれなりにセリフが多く、要するに「裏市」で描かれたような矛盾は生活空間のとある一角に表出した遠い世界の話ではなく、自らの日常を浸食した時に我々(とあえて人間の話として言うが)はどう行動するのか?を突き付けられている場面だと読者が理解するのがたやすくなっている。

 

しかし、アニメ版ではかなりセリフを刈り込んでることもあって、この場面を一度見てその流れを納得するのは難しいだろう。とはいえ、単純に批判をしたいわけではない。というのもそこでの引っかかり、すなわち「大いなる目的のためには小さな犠牲を容認してもよいのか」という問いは受け手の議論を呼ぶものであり、それを計算してやっている(=戦略的なものの)ようにも見受けられるからだ(言うまでもないことだが、これは戦争や革命をはじめとして我々の歴史に深く関わる問いである)。

 

物語展開としては、この問いは何よりルイ自身に最も重くのしかかるものであり、だからこそ彼の後の行動につながっていくことも理解されやすくなるだろう(ネタバレしない程度に書くと、もし今回のような形で矛盾の封じ込め=ノイズ排除が肯定されるならば、「社会秩序を保つ(=大きな善)ための隠れた肉食(=小さな悪)も肯定されるべきではないか?」という具合に彼自身のレゾンデートルとも深く関わる領域で、大きな矛盾をきたしてしまうからだ)。

 

原作であった説明的描写を大きく省くことで、事態の緊急性と、それゆえに大きく分化するキャラクターの行動が強く印象付けられた回だったと言っていいだろう(これを踏まえると、ビルとの一件は時間の経過を疎外しない形で回想シーン的に挿入されるのかもしれない)。ともあれ、それがどこまで上手く着地するかは、ここからの2話分ぐらいをしっかり見て判断することにしたい。


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