ビッテンフェルトはヒャッハーの夢を見るか

2019-09-01 11:40:36 | 歴史系

 

 

 

 

 

 

 

日本軍て弱いのに、愚かにもアメリカに戦争ふっかけたんだよな・・・なんて考えるのは当然馬鹿げている。ワシントン体制の軍縮条約などを見ても十分だが、当時の日本の海軍力は相当なものだし、また実際戦争の中で上げた戦果からすれば練度や技術力は極めて高い。

 

じゃあ日本軍はとにかくスゲーのか??やたらにその技術力を称揚する言説はあるが、不思議なのは「しかしそれにもかかわらず、決定的かつ徹底的に敗北したのはなぜか?」という視点で考察したものは極めて少ないことだ。ゆえに、そういった(日本スゲー的)言説を見ていると、自我を日本(軍)に肥大化させて、己のマチズモを満足させようとしてるだけなんでねーか、との疑いを私は禁じえないのでR。

 

前者のように日本軍を必要以上に過小評価したり嫌悪するのは(戦後民主主義における)平和というファシズムの病理で、後者のように日本軍万歳と言ってれば何かした気になってるお花畑的思考は(戦前における)戦争という名ののファシズムの病理であると言える。それは表面上両極にあるように見えるが、その実病理の根源が現実のリージョナルな分析ではなく精神主義に基づいている点で同根であると言えよう。

 

もしもあの大戦を恐るべき教訓としてその胸に刻むのであれば、当時の日本のポテンシャルというものを合理的かつ徹底的に理解(しようと)し、その上でなぜそれにもかかわらず破滅が到来したのかを論理的に分析する以外に方法がないように思われる。

 

・・・なんつー感じで始めてみましたが、そういった分析の一視点が補給の問題である。なんせまあガダルカナルが「餓島」と呼ばれることに象徴されるごとく、当時の餓死者は相当数に上り、それは脆弱な補給線と兵站を軽んじた勢い重視の拡大による面が相当に影響していたわけである(いくら優れた会社でも、たとえば急速に支店を拡大して各支店がワンオペ祭りだったら仕事回らんで崩壊するのは自明の理なのだが・・・あと、ちょっと経営が上手く行き出したところで色々な方面に手を出して結局本業までアベシな状態になるってのもありふれた失敗パターンだよねえ。まあこの辺は戦争計画の杜撰さも相当程度関係している、とだけ書いておきたい)。

 

とはいえまあロンメルの勢い重視の戦い方や彼への高い評価、あるいは名将マンシュタインでさえソ連の人的資源を過小評価して「失われた勝利」とか言ってしまう点(スターリングラードにおける激戦の後でなお、240万の軍隊をドイツ侵攻に動員できた時点でその底力は相当なものであるとしか言いようがなく、ドイツ軍の装備が厳冬に対応していないといったビハインドの中、これを一体どうやって殲滅できたというのか)を鑑みると、旧日本軍的な盲目的態度は大なり小なり色々な国で起こっていることなのだろう(まあそもそもイタリアという身の程知らずのクズ、おっと誰か来たようだ・・・)。

 

しかしこの認識は、むしろそういう失敗パターンないし失敗学が、一部の地域や国家ではなくある程度の普遍性をもって通用する=有効であるものとなるはずで、ならばむしろこういうテーマこそ教育で扱うべきなんじゃないすかねーと思うんですがどうなんでしょ。

 

まあそれはともかく、今回の補給の話はクレフェルトの『補給戦』に負う所が大きいことは動画内でも触れられているが、その冒頭に登場する17世紀の戦争状況についてはこういった動画もあるので興味があれば参照されたい(スゲー長いがw)。

 

 

 

ほぼ同じタイミングの動画として近世の傭兵に関しての解説もあるが、こちらは中世のスイス兵や弓兵として活躍したイギリスのヨーマン、あるいは軍事革命などにも触れられていておもしろい。ちなみに三十年戦争が江戸時代と同時期であるという話が出てくるが、同時代の意識は結構重要で、たとえばイギリスがどちらに着いたのか云々の話はそもステュアート朝初期でジェームズと議会の対立が起こっていた時代で、1628年の権利の請願や1642年から始まるイギリス内戦(教科書的にはピューリタン革命)などのために介入がそもそも大々的にできなかったという背景がある。また傭兵がこの時期に多かった理由として「17世紀の危機」と言われる気候の寒冷化が起こっており、凶作と生活苦による背景もあった(ちなみにこの影響で農奴解放が進んだはずのフランスで農民の困窮と富裕層への隷属化が起こり、フランス革命期までアンシャンレジームが温存される一因となっている)。

 

とちょいちょい書いてみたが、こういう歴史について学んでみると、いかに世の中がデタラメにできているのかがわかり(というか世の中とはちゃんとしてるものだと一体いつから錯覚していた?て話だがw)、それもまた非常におもしろいっスよーと述べつつこの稿を終えたい。


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