「これはナムルですか?」「いいえ、鳥の糞ですよ。」
そんな松井さんと客のやり取りが聞こえてきそうな国の名前(妄言)だが、その正体は岡山の県北にある(嘘)ニート量産機、ナウル共和国である。
動画で紹介されているように地下資源のリンを輸出して大儲けしていた国であり、以前言及したフリッツ=ハーバーのハーバー・ボッシュ法とも関係する。というのも、それ以前は渡り鳥の糞を肥料にするなどしていたため農業生産量に限界があったが、同法による化学肥料の発明によって生産力が飛躍的に向上した結果、人口の大量増につながった一方、同法で硝酸の大量生産も可能になったため大規模戦争の継続が可能になってしまい、WWⅠの惨禍の一因となった。
という風に歴史的に見てもおもしろいが、これからの社会を考える上でもナウルのあり方は非常に示唆に富んでいる。毒書会がスタートしてから『AI原論』・『反知性主義』・『AI時代の労働の哲学』・『ホモ・ルーデンス』を取り上げてきたが、要するにAIが発達して必要な労働の量ないしは拘束時間が減少した時、どのような社会が到来するか、あるいはどのような社会設計が現実的・理想的かというのも重要なテーマである。
極めて大きな話のためここで詳述はしないが、今回のナウル共和国の動画で言えば、ベーシックインカム・サステナビリティ・財源と再配分の原理(さらに言えば、福利厚生の差に伴う移民の問題)といったことが関わってくる。たとえば地下資源なら国の共有財とすることもできるだろうが、(ありきたりでいささか極端な言い方だが)AIが生産の中心を担うなら、それを生産・管理する1%のハイパーリッチと、99%の零細労働者という構造は十分考えうるわけで、その場合1%が99%に再配分するロジックはどんなものだろうか?少なくとも、タックスヘイブンやパナマ文書の件を考えれば、「ノウゼイ?モチロンシテマスヨ。アイ〇ランドニネwww」てな事態もまた当然のように想定されるわけである(そしてそれへの国内世論の反応の鈍さを踏まえると、適法なんだから何が悪いのか、とばかりに問題の大きさをまるで理解できてないんじゃないかと思う)。
そう考えると、ナウル共和国は「そんなん上手くいくわけねーよなーw」と半ば教訓めいた笑い話に見えるが、きたる将来を考える上では他人事でないと言えるのではないだろうか。
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