山里に生きる道草日記

過密な「まち」から過疎の村に不時着し、そのまま住み込んでしまった、たそがれ武兵衛と好女・皇女!?和宮様とのあたふた日記

山田洋次イズム止まらぬ「東京家族」

2013-02-21 19:13:00 | アート・文化
 小津安次郎監督の「東京物語」は史上最も優れた作品と世界の映画監督が絶賛した不朽の映画。
 その古典の名作に挑んだ山田洋次監督の「東京家族」。
 その違いを楽しみに都会のスクリーンに駆けつけた。
 田舎から老夫婦が東京の子どもの家に上京するという基本的なストーリーは同じである。

     
 大きな違いは、末っ子に婚約者を配置したことだ。
 この存在が小津作品を越えようとする鍵でもある。
 「東京に来てよかった」と言っていた妻「吉行和子」が突然亡くなってしまう。
 また、経済と効率優先の都会・東京に翻弄されてしまう人間の切なさ。
 そんななかに、小さな光を灯すのが山田洋次の本領発揮なのである。

             
 頼りなさそうな末っ子「妻夫木聡」のやさしさ。
 しっかりもんの婚約者「蒼井優」のさわやかさ。
 二人の希望が頑迷な父「橋爪功」の心を開く。

 こうした小さな希望が一人になってしまった父を励ます。
 それは都会の風穴を穿つ希望に違いない。

小津監督は老夫婦の悲しさを社会に静かに告発したが、山田監督はそこに若い愛を注入することで閉塞の中の希望を託す。
 父が住む離島のつつましい風景がフェイドアウトする。
 それは狭っくるしい空間に住む都会の描写と対照的だった。
 なんども涙を拭ってしまった。
コメント (4)
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