山里に生きる道草日記

過密な「まち」から過疎の村に不時着し、そのまま住み込んでしまった、たそがれ武兵衛と好女・皇女!?和宮様とのあたふた日記

いつのまにか浅田ワールドに魅入る

2017-06-07 18:02:05 | 読書
 浅田次郎『日輪の遺産』(講談社文庫、1997.7)をいつの間にか読み終える。
 戦後復興に役立てる特命をうけた少佐が極秘裏に隠匿したマッカーサーの財宝。
 終戦直前に密命を実直に具体化していく少佐と戦争遂行をした参謀たちの末路、戦後のGHQ首脳たちの内部葛藤。
 荒唐無稽なスタートに期待値は低かったが、読み進んでいくうちにいつの間にかヒューマンな浅田ワールドのさなかに迷い込んでしまった。

                               
 戦争を知らない世代であり、オイラより若い浅田次郎が描く戦時体制の描写は、まるで戦中派であるかのようなリアリティーがあった。
 少佐が残した手帳の表現は本物の日記資料であるかと思ったくらいだ。

  
 ときどき引用される故事成語は難解だったが、ところどころに心理描写や風景描写に唸るような表現がフットワークする。
 「鍛え上げられた将軍の体躯が、確実な死をも拒否しているようであった。死はおそろしく緩慢に迫っている。まるでそうしてより激しい苦痛を味わうことが、正しい死の作法であるかのように、将軍は身を慄わせ、低く唸り続けた。」
 という具合に。

                                 
 少佐が残した手帳や隠匿した財宝とは、戦後を生きる日本人へのメッセージ・精神的「遺産」であるように思えた。
 それは「秘密を守るために20人の女子学生と教師の自死を無駄にしない」という浅田次郎の矜持が伝わってくる。
 映画化された同名の映画は、2011年公開、監督佐々部清。堺雅人を主人公に中村獅童・福士誠治・八千草薫らが共演。
 いつか観てみたい。  
コメント
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