朝から大雨が襲って、近くの県道が通行止めとなった。
畑仕事ができないので是枝裕和監督の映画「三度目の殺人」を観に行く。
前半は坦々としていたが後半からの弁護士(福山雅治)と犯人(役所広司)との接見場面が迫力がある。
従来の法廷劇は、真実がだんだんと解明されていくところにサスペンスがあるが、それがますます何が真実かがわからなくなるというストーリーだ。
そこに是枝監督の非凡な狙いがある。エリート弁護士の上から目線が死刑判決を受ける犯人の人間的な真摯さに翻弄されていく描写が斬新だ。
つい最近、ベネチア国際映画祭でこの映画が金獅子賞を逃したが、欧米人にはこの展開がわかりにくかったのではなかろうか。
法曹界は、自分たちの主張の勝利が優先されたり、検事・弁護士の談合で歪曲されたり、時の権力の政治力が貫徹されたりして、真実とは何かを明らかにする体質が風化しつつある。
そんな現状に一石を投じる是枝監督の深さが沁みてくる。
是枝監督の優しさは現状への静かな怒りと人間の在り様への共感にあるのではないかと思われる。