暗い杉木立のトンネルをくぐると突然現れてくる桃源郷「百古里(スガリ)」集落がある。行くたびに感動がある。坂上田村麻呂が祈願したという将軍杉の下ではコンサートをやっていた。
50以上の出店が集落のあちこちに点在する。その中を新春のうきうきを歩く参加者の笑顔が素敵だ。戦争が絶えぬ世界のいがみ合いの中で自然を味わい四季を愛でる東のジパングのなんという晴れやかさだろうか。
神社前のコンサートの片隅で「焼牡蠣」をいただく。山の奥深くで海の牡蠣をほお張るとはなんという贅沢だろうか。恵まれた自然に育まれた桃源郷は、ムラのアーティストや「志民」が小さな志を持ち合って種を撒き芽を育ててきた賜物だ。
水をたたえた田んぼにはドジョウがうごめいていた。水面には借景の山々が応援してくれている。自然農に生きる池谷夫妻の悠々たる生き方がそこにはある。政治家に汲々として「忖度」に生きる官僚のバカバカしさはここにはない。清貧の中にも緩やかに生きるもう一つの選択肢がここでは提示されている。それは都市に捨てられた過疎地だからこそ提示できる生きかたなのかもしれない。