山里に生きる道草日記

過密な「まち」から過疎の村に不時着し、そのまま住み込んでしまった、たそがれ武兵衛と好女・皇女!?和宮様とのあたふた日記

秋野不矩美術館の価値を再発見

2018-08-26 20:12:44 | アート・文化

 秋野不矩(フク)美術館を設計した藤森照信先生の昨日の講演を聴き、何気なく見ていたものがあらためてその価値を再発見する。石垣の代わりに地元の天竜杉を並べた壁は周りの環境に溶け込むことをねらっている。

 

         

 その将来の姿が美術館入口まもなくにある。今までこの坂の壁面をなんとなく歩いていたが先生の意図を見抜くことはできなかった。こうした自然素材をさりげなく配置するところに先生の真骨頂がある。

 

                

 先生が設計した宇宙船のような茶室「望矩楼(ボウクロウ)」は、本体の骨格が天竜杉、脚が天竜檜、屋根と壁は小中高校生の協力で作った銅板からなっている。茶室からは周りの山並みと二俣の街並みを眺望できるというが、残念ながら中には入れない。和洋に精通している藤森さんの遊び心が横溢している。

 

              

 館内のメイン会場から第二会場に行く途中、廊下も壁も土・漆喰でできていることを改めて再認識する。真ん中あたりにトイレがあるが、それはスタンダードなつくりで期待外れだった。美術館に入るにはまず靴を脱いでスリッパに履き替える、さらにスリッパを置いて裸足にならなければならない、そのめんどくさい理由が随所にあるのがやっとわかった。

 

               

 2階へ行くにはタイルのカーテンをくぐる。これもワークショップで作ったもので、鉄線をタイルで挟んである。これを分け入るとタイルどおしが触れて風鈴のハーミニーのような音がする。

 

 

 2階への階段はなんとそこにも土を塗りこんである。館内すべてにこうしたさりげない自然素材の仕組みがある。展示している作品だけについ目を奪われてしまうが、秋野不矩美術館はこうした自然素材の使われ方自体がアートであり、思想であるのがわかる。合理的で効率的な建築が跋扈する昨今、自然素材の個性を生かしたこの発想は現代をいかに生きるかにかかわる哲学であるのを発見する。

 

   

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする