私が小学4年生、10歳の時から買ってもらった講談社の少年少女世界文学全集、結構おもしろく、当時の小学生は、買ってもらったり、図書館で借りたりして広く読んでいたもの。今から60年前、昭和34年からの話。我が家にあった全集は、父母がなくなったあと、私が引き取り、以来、暇にまかせては、手に取って読んできた。最近は、グリム童話集を読んだ。あかずきん、白雪姫、ヘンデルとグレーテル。これを手に取った私は10才、ひらがなが多く、話が比較的短く簡潔で、なんとか全頁読んだ記憶。そのなかで、下の「おじいさんと孫」の話は今も記憶に。可哀そうなおじいさんを、親がいじめるのを見て、小さい孫が、将来親が年取ったら使わせると、木の粗末な桶をつくったところ、親が目が覚めて、おじいさんを、大事にし出した話と記憶。自分を子供とその親に見立てて、10歳の私は読んだ記憶。今回71歳で読むと、手が震え、よだれが垂れるおじいさんに自分引き寄せて読んでいました。読む年齢により、話の力点が変わってくるのだと、知ったことでした。私もこのおじいさんと似た年齢で、明日は我が身。60年前と同様、しかし別の光景で、強く印象に残る短編。
↓・・グリム童話
おじいさんと孫(グリム童話集 講談社 少年少女世界文学全集 昭和34年4月発行)
むかし、ひどく年をとったおじいさんがありました。目はぼんやりし、耳はつんぼになりました。おまけにひざはがたがたふるえていました。
いまでは、テーブルにすわっても、もうさじをちゃんともつことができませんでしたので、いつもスープをテーブルかけの上にこぼしました。また、くちからもいくらかスープがもどってながれるのでした。
おじいさんのむすこと、そのおよめさんは、それがいやでたまりませんでした。ですから、年とったおじいさんは、とうとう、だんろのうしろのすみっこにすわらなければならなくなりました。
そのうえ、むすこたちはおじいさんのたべものを土のさらにいれてやり、しかも、おなかいっぱいにはたべさせませんでした。
するとおじいさんは悲しそうにテーブルのほうをみました。しかも、その目はぬれました。あるときいおじいさんのふるえる手は、その小ざらさえしっかりもっていられず、小ざらはゆかに落ちてわれてしまいました。
わかいおよめさんは、ぶつぶついいました。でも、おじいさんは一こともいわないで、ただ、ためいきをついていました。およめさんは、おじいさんのために、ほんの少しのお金で木の小ざらを買いました。おじいさんは、いまではその小ざらでたべなければなりませんでした。
みんながそうしてすわっているとき、四つになる小さい孫が、小さいいたぎれをはこび集めていました。
「おまえはそこで、なにをしているんだね。」
と、おとうさんはたずねました。
「ぼく、小さなおけをこしらえているんだよ。」
と、子どもは答えました。
「ぼくがおとなになったらね、おとうさんやおかあさんは、このおけでたべるんだよ。」
これを聞くと、むすことおよめさんは、しばらく顔を見あわせていましたが、とうとうなきだしてしまいました。
年とったおじいさんを、すぐテーブルのところへつれてきました。このときから、おじいさんには、いつもみんなといっしょにごはんをたべさせました。そして、すこしくらいこぼしても、なんともいいませんでした。
↓・・グリム童話
おじいさんと孫(グリム童話集 講談社 少年少女世界文学全集 昭和34年4月発行)
むかし、ひどく年をとったおじいさんがありました。目はぼんやりし、耳はつんぼになりました。おまけにひざはがたがたふるえていました。
いまでは、テーブルにすわっても、もうさじをちゃんともつことができませんでしたので、いつもスープをテーブルかけの上にこぼしました。また、くちからもいくらかスープがもどってながれるのでした。
おじいさんのむすこと、そのおよめさんは、それがいやでたまりませんでした。ですから、年とったおじいさんは、とうとう、だんろのうしろのすみっこにすわらなければならなくなりました。
そのうえ、むすこたちはおじいさんのたべものを土のさらにいれてやり、しかも、おなかいっぱいにはたべさせませんでした。
するとおじいさんは悲しそうにテーブルのほうをみました。しかも、その目はぬれました。あるときいおじいさんのふるえる手は、その小ざらさえしっかりもっていられず、小ざらはゆかに落ちてわれてしまいました。
わかいおよめさんは、ぶつぶついいました。でも、おじいさんは一こともいわないで、ただ、ためいきをついていました。およめさんは、おじいさんのために、ほんの少しのお金で木の小ざらを買いました。おじいさんは、いまではその小ざらでたべなければなりませんでした。
みんながそうしてすわっているとき、四つになる小さい孫が、小さいいたぎれをはこび集めていました。
「おまえはそこで、なにをしているんだね。」
と、おとうさんはたずねました。
「ぼく、小さなおけをこしらえているんだよ。」
と、子どもは答えました。
「ぼくがおとなになったらね、おとうさんやおかあさんは、このおけでたべるんだよ。」
これを聞くと、むすことおよめさんは、しばらく顔を見あわせていましたが、とうとうなきだしてしまいました。
年とったおじいさんを、すぐテーブルのところへつれてきました。このときから、おじいさんには、いつもみんなといっしょにごはんをたべさせました。そして、すこしくらいこぼしても、なんともいいませんでした。