一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『マネーボール』 …マネーボール理論の成功譚にしていないところが秀逸…

2011年11月21日 | 映画
ブログ「一日の王」を訪問し、
〈なんだ、日曜日の更新をしてないじゃないか!〉
とひとりごちたあなた、
そして憤慨したあなた、
スミマセン、
私、TVで野球を見とりました。(笑)
そう、日本シリーズのソフトバンクvs中日。
一応、私も九州人なので、ソフトバンクを応援しとりました。
第7戦までもつれ込み、
4勝3敗でソフトバンクの日本一が決定。
昨夜は祝勝会のビールかけまで見てしまったとです。
ふと気づくともう寝なきゃいけない時間。
で、ブログの更新ができましぇんでした。

閑話休題。
日本シリーズは素晴らしい試合の連続だったが、
一方、
日本シリーズ期間中というのに、
巨人の内紛騒動は、
泥仕合ならぬ泥試合の様相を呈し、
益々白熱化している。
というか、見苦しい凡戦を展開中。
解任された清武前GMは今後どう反撃するか……
といったことはそれほど興味はないが、
日本のゼネラルマネージャーがどういうものであるか、
どの程度の存在であるかを、
今回の騒動はよく知らしめてくれたような気がする。(笑)

この巨人の一連の騒動を見て、
先日見た映画『マネーボール』を思い出した。
この映画がまさに大リーグにおけるゼネラルマネージャーのひとつのあり方を示した傑作だったからだ。

選手からフロントに転身し、若くしてメジャーリーグ球団アスレチックスのゼネラルマネージャーとなったビリー・ビーン(ブラッド・ピット)は、自分のチームの試合も観なければ、腹が立ったら人やモノに当り散らす短気で風変わりな男。


ある時、ビリーは、イェール大経済学部卒のピーター・ブランド(ジョナ・ヒル)と出会い、


彼が主張するデータ重視の運営論に、貧乏球団が勝つための突破口を見出す。


そして、周囲の反対を押し切って、後に「マネーボール理論」と呼ばれる戦略を実践していく。
有名選手を高い年俸で雇う代わりに、新たな基準で選んだ無名の有望選手を集めるのだ。


当初は理論が活きず、ビリーとピーターのコンビはバカにされる。
だが、主力選手一人と交換に、一見寄せ集め風の3人の選手を入れ、キャッチャーしかやったことのない選手に一塁を守らせるなど、ハタ目からは無謀なトレードを繰り返すうち、誰も予想しなかった軌跡が遂に訪れる……
(ストーリーはパンフレットから引用し構成)


私の場合、
小学生の頃はソフトボール部に、
中学・高校時代は、野球部に所属していた。
「それがどうした?」
と言われそうだが、
だから……
私は、野球に関しては、チトうるさい。
いや、かなりウルサイ。(笑)
いやいや、とても五月蠅い。(爆)

日本には、ありえないような設定の野球ドラマ・映画が溢れて過ぎている。
どうして、野球を題材にした日本のドラマや映画は、あれほどマンガチックなんだろう。
たとえ原作がマンガだとしても、
程度問題だと思うのだが……
まったくリアリティのないストーリーは、
女・子供(差別的意味合いではなく)にはウケるかもしれないが、
野球をしたことのある者、よく知る者にとっては、
ただ白けるだけである。

映画『マネーボール』も、
実は、マンガみたいなストーリーなのである。(オイオイ)
でも、それまでのマンガみたいな数多の映画と違うのは、
事実を基にした作品だということだ。

弱小チームだったアスレチックスは、
2001年と2002年に、
リーグ最低レベルの年俸総額ながら、2年連続でシーズン100勝を達成。
しかも、2002年には、20連勝という記録をつくる。
2001年に大リーグに行ったイチローが活躍していたということもあって、
あの当時、大リーグのニュースは今よりももっと日本に紹介されていた。
このアスレチックスの20連勝も大いに話題になった。
3回までに11対0と大量リード。
しかし、ロイヤルズの反撃に遭い4、8回に5点ずつを奪われ、
9回には同点とされたが、
その裏、代打ハッテバーグの本塁打でサヨナラ勝ち。


これらのことが、映画でそのまま使われている。
ほとんどが事実なので、説得力がある。

だから、ただのヒーロー物の映画ではない。
事実、アスレチックスはプレーオフには進出するものの、
リーグ優勝はしていない。
よって、ワールドシリーズ優勝でメデタシメデタシ……とはならない。
そこがイイ。
野球における「マネーボール理論」の成功譚にしていないところが秀逸。

そして、主役であるアスレチックスのGMビリー・ビーンも、
完全無欠の男ではなく、
過去に挫折の経験があり、
不器用で、頑固で、短気で、小心で……というように、
人間として、いろいろな傷や欠点もある男として描かれている。
そのちょっと半端者的な中年男を、ブラッド・ピットが実に巧く演じている。




この映画を見ると、
野球界の舞台裏でどんなことが行われているかが判るし、
野球の試合がまた見たくなる。

日本シリーズは終わったけれど、
これからは、ストーブリーグが活発になる。
日本にはビリー・ビーンみたいなGMはなかなか現れないと思うけれど、
古い常識を打ち破るような球団、GM、監督、選手の出現を楽しみに、
来年を待ちたいと思う。

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