原題:『Neneh Superstar』
監督:ラムジ・ベン・スリマン
脚本:ラムジ・ベン・スリマン
撮影:アントニー・ディアス
出演:オウミ・ブルーニ・ガレル/マイウェン/セドリック・カーン/リシャール・サムエル/ナタリー・リシャール/レオノール・ボラック
2022年/フランス
バレエの見せ場がないバレエ映画について
パリ郊外の労働者階級出身で黒人の12歳の主人公であるネネはパリのオペラ座で7人しか合格しない入学試験にトップで合格するのだが、そもそもバレエは白人であることを前提に制作されているために、ネネは学校内では生徒だけではなく教師の間においても議論が分かれる存在と化す。
特に校長のマリアンヌはネネを忌み嫌うのであるが、それはやがて明らかになるようにマリアンヌ自身が北アフリカ出身だったからであり、それは学校の関係者さえ知らない事実だった。皮膚の色が黒くなかったマリアンヌは自身の出自を隠すために、カラーコンタクトで目を青くするほど徹底していたのである。一言で黒人といっても肌の色には様々なグラデーションがあり、それが問題を複雑にしている嫌いはある。
しかし不思議なのはバレエそのものも見せ場がないところで、だいたいラストは踊るシーンで終わらせるはずなのだが、それは俳優陣に実力がなかったからとしか言いようがないし、ダブルを用意することもなかったようだ。
どうやらロンドンには黒人ダンサーのための学校「ポワント・ブラック・バレエスクール」が2020年に設立されたばかりで、ようやくバレエの世界にも多様性がもたらされるようになった感じである。本作の主人公であるネネのように誰もがプリマバレリーナを目指している訳ではなく、ただ好きで踊りたい人もたくさんいるのだから、「開放」は極自然の流れのように思う。