原題:『1947 보스톤』 英題:『Road to Boston』
監督:カン・ジェギュ
脚本:カン・ジェギュ/イ・ジョンファ
撮影:チェ・チャンミン
出演:ハ・ジョンウ/イム・シワン/ペ・ソンウ/キム・サンホ/パク・ウンビン
2023年/韓国
走ることの可能性について
1936年のベルリンオリンピックのマラソン競技で金メダルと銅メダルを獲得した孫基禎と南昇竜は、実は韓国人のソン・ギジョン(当時の世界記録保持者)とナム・スンニョンだったというところから物語は始まる。第2次世界大戦の終結とともに韓国は日本から解放されたものの、「日本人」がメダルを獲ったという記録が変わることはなく、すさんだ生活を送っていたソン・ギジョンの元を訪れたナム・スンニョンは「第2のソン・ギジョン」という企画を提案する。当初はギジョンは乗り気ではなかったのだが、ソ・ユンボクという若手の走りを見て1947年のボストンマラソンに向けてコーチを引き受けることになるのである。
しかし当時の韓国はアメリカには独立国家としてではなく、アメリカの管轄下の難民国と認識されていたために、アメリカに入国することさえ保証金として2000ドルを必要とし、ギジョンが面識のあったボストンマラソン優勝者のアメリカ人のジョニー・ケリーの援助もあって何とかボストンマラソンの招待状をもらったにも関わらずアメリカが保証人になったために韓国人ではなくアメリカ代表のような形で出場する羽目になってしまう。マスコミを通して訴えたことが功を奏してユンボクは太極旗を入れて走ることができるようになり、無名だったユンボクがボストンマラソンで優勝するのである。
日本人ならば第二次世界大戦後に韓国が独立したことくらいは想像がつくが、韓国は戦後も苦しい立場に置かれていたことを本作で初めて知った。史実に基づくものだから、派手さは無いが佳作といっていいのではないだろうか。