原題:『徒花 - ADABANA -』
監督:甲斐さやか
脚本:甲斐さやか
撮影:高木風太
出演:井浦新/水原希子/三浦透子/甲田益也子/板谷由夏/原日出子/斉藤由貴/永瀬正敏
2024年/日本
「イノセンス」という免罪符について
どうやらウィルスの蔓延により人口が激減している近未来が舞台で、延命措置として上流階級の人間だけが延命治療として使用できる「それ(クローン)」の所有が許されているようで、実際に難病を患ったらしい娘の治療のために母親が娘を連れて密入国しようとしたものの、入国審査であっけなく2人とも排除される様子が作品の冒頭で描かれている。
しかし緊張感があったシーンはこの冒頭のシーンだけで、残りは主人公の新次と彼の担当である臨床心理士のまほろの物語が静謐に進んで行くという感じでストーリーにメリハリがない。新次が不治の病であることは分かるのだが、新次の幼少時代の母親を巡るトラウマも海岸で出会う元カノとの想い出も具体的に描かれることはなく、かと言って新次が出会う新次の「クローン」は人形を作って過ごしているようなのだが、新次が自身よりも代わりに自分のクローンの方が生き残るべきという確信がどのようにして生まれたのかもよく分からない。それが「イノセンス」ならば話が単純過ぎると思う。