原題:『Luce』
監督:ジュリアス・オナー
脚本:ジュリアス・オナー/J・C・リー
撮影:ラーキン・サイプル
出演:ケルヴィン・ハリソン・Jr./オクタヴィア・スペンサー/ナオミ・ワッツ/ティム・ロス
2019年/アメリカ
想像以上に複雑怪奇なアメリカの人種差別について
主人公のルース・エドガーは北ヴァージニア高校(Northern Virginia High School)に通う優秀な生徒だが、教師のハリエット・ウィルソンとの関係は微妙だった。それはアメリカ合衆国に住む黒人として白人に見下されないように立派でなければならないという信念が高校の生徒に対しても厳しくなり、ルースの同級生であるデショーン・ミークスに対する処分によりデショーンが奨学金を受け取れなくなったことに端を発している。ハリエットの厳しさは彼女の妹のローズマリーに対しても変わらず、ローズマリーは精神的ダメージを被っているように見える。
優秀なルースはじわじわとハリエットを追い詰めていくのだが、果たしてルースが正しくてハリエットが間違っていると言えるかとなると微妙なのである。それはただの世代交代なのか、あるいは「古参」のハリエットと、7歳でエリトリアから養子として引き取られたルースや彼女の恋人であるアジア系のステファニー・キムのような新しいマイノリティとの内部抗争なのか考えさせられ、いずれにしても内輪で争っていては人種問題は解決しないからである。
ところで教師のハリエットという名前なのであるが......。