原題:『ルパン三世 PartⅢ 悪のり変装曲』
監督:吉田しげつぐ
脚本:鈴木清順
出演:山田康雄/小林清志/増山江威子/井上真樹夫/納谷悟朗/宗形智子
1984年/日本
「変装」を巡る壮絶な死闘について
本作はルパン三世シリーズの中でも難解とされる作品の一つであるが、ここでは原点に戻ってタイトル通りに悪のりの「変装」に焦点を絞って説明してみたい。
銭形警部に追っかけ回されて疲労困憊しているルパン三世を迎えにきたのは峰不二子に扮したマダム・ルイサであることは間違いないであろう。ではマダム・ルイサの目的は何だったのか勘案するならば、「変装」に関することであろう。言うまでもなくルパン三世は変装の達人であるが、マダム・ルイサも大豪邸の一室に変装道具が大量に隠してあったことはルパン本人が発見している。つまりマダム・ルイサの目的は好敵手のルパン三世を殺害することで自分が世界で一番の変装の名人になることなのである。
ところがルパン三世が処刑される寸前に現れたのが大量のカラスで、カラスの襲来にルパン三世は銭形警部のおかげで難を逃れたのであるが、マダム・ルイサは襲われ、全身傷だらけの上に右眼も失ったため、まともに変装できなくなり、絶望して拳銃で自殺してしまう。
カラスを食べているシーンがあることから、ルパン三世とカラスは「仲間」ではない。ラストシーンでは自家製の変装防止箱と共に検問している銭形警部とルパン三世が対峙する。そしてルパンが先に変装防止箱に入ると、それを待っていたかのようにカラスがルパンの顔に被るように飛ぶのであるが、これはルパンの顔を隠すというよりも視聴者が見つめる場所に飛ぶことでカラスは自分の存在を印象づけたかったのだと思う。
それではルパン三世とカラスの関係とは何なのか、「変装」という観点から考察するならば、ルパン三世同様にカラスも「変装」の名人なのである。ためしにあるカラスを特定して、暫く時間を置いてから再び同じカラスを見分けられるかとなると無理だからである。ルパン三世とカラスは「変装」の仕方こそ対照的ではあるが、「自分自身」を隠すことに関してはどちらも一流で、最後にルパンの目が赤く光る意味はそのことにルパンが気が付いたということではなかったか?