定年を迎えた折り、再任用を断り「遺跡発掘作業員募集」の説明会に行った。しかし会場に入って「場違い!」と理解したのだ。というのも若者から育ち盛りの子供を抱えているであろう年代の人たちが圧倒的多数であった。希望したとしても選定される保証は無いものの競争率を下げるためにも登録は止めて帰宅した。遺跡発掘は定年後に行いたかった作業である。
そのあとシルバー人材センターの説明会にもいったのだが河川敷や公園の刈り払い、あるいは庭木の剪定などで時間を浪費するのも馬鹿馬鹿しくて姥捨て山に本腰を入れたのだった。
それはともかく「崖の下のジジ」になって二日目、左右に迫る崖を見ながらの作業に妄想する事があった。このまま再崩落で「ジイジは冷たい土の下に・・・」なんて思わずフォスターの歌をつぶやいてしまった。でもまあ、気を取り直して作業開始だ。

管路を追い掘りしながら発掘を進めたのだが、前日に切株上で「への字」になっていた箇所に近づくたびに「地中でN字に曲っているのでは?」という感じが出て来た。そうなると管の補修は更に厄介になる。しかし掘り出した管が平行に並んでくるのを見て安心したのだ。「潰されたのは別系統の管で、追っている管は屈曲せず上流に延びている」確信である。
上の写真の範囲は左岸に押し詰まった崩落土であるが、作業はこの崩落体を掘り下げ送水管を取り出したいものの地中にはフジや竹、クズの地下茎や細根が織り重なっていて一筋縄ではいかなかった。ツルハシで軽くつっつき厚鎌で地中の細根を掻き切り、鎌が無力なら剪定鋸を差し入れて切断して携帯スコップで土を排除する、繰り返しである。この時ばかりは片膝をついての作業とならざるを得ないので「これって遺跡発掘じゃん!」と昔日の夢が叶ったのであった。
同じ場所での作業は変化に乏しく飽きが来る。そこで折りを見ながら上流部、下流部と場所を入れ替えながら飽きが来ないように努める。
上流部で作業していた折、水位は平常に戻ってはいるものの水面から10cmほどの高さに管があり、これでは降雨出水すればまた水の抵抗を受け被害が増えるやもしれないから右岸の流木下にあった管を掘り出して流木上に設え直した。これで水面から50cmほど高くなったのでとりあえずは安心である。
この日の作業はここまで。残りは5m程度だが被さった土の厚さは1mに達する。掘り取った土の置き場所に難儀するだろうが、この地下に排砂バルブが埋まっているだろうから掘り上げられればバルブの操作が出来る。それでここまで通水しているかいないかが判明するのだが更に1日発掘を続けなければならない。

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渡河地点の管を高くして水流を避ける