澎湖島のニガウリ日誌

Nigauri Diary in Penghoo Islands 澎湖島のニガウリを育て、その成長過程を記録します。

台湾人の視点から見た「台湾海峡 一九四九」 

2012年07月18日 11時15分07秒 | 台湾

  先日、「台湾海峡 一九四九」(龍應台著 白水社刊  2012.6.22)について、感想らしきものを書いた。台湾・香港でベストセラーになったという本書の特徴は、台湾・外省人の立場で書かれた歴史という点にある。
 
 
(「台湾海峡 一九四九」(龍應台著 白水社刊)

 それでは、日本統治時代あるいはそれ以前から台湾に住む本省人は、この本をどのように感じているのか。私は台湾人(本省人)の友人に感想を尋ねてみた。友人からは、率直な返事が届き、私にとっては新たな思いが加わった。
 その返事は、おおよそ次のようなものだった。独学で勉強中という日本語で書かれていた。

一九四九年 私のお母さんは13歳でした。お母さんから、次のようなことを聴きました。

一 日本が敗戦したとき、台湾にいた日本人は何も持たずに日本へ帰国させられました。そのとき、非常に悲しく思いました。

二 台湾政府は、中国から台湾にやって来ました。228事件を起こしました。最初、タバコ売りの老婆を軍人が迫害したのがきっかけでした。

三 外省人は強い性格です。台湾人は身近な利益を大切にします。 (これが、馬英九などの外省人が選挙で勝つ原因です。)

四 日本統治時代、台湾人と日本人は感情がいいです。 」

 日本統治時代を経験した父母を持つ台湾人(本省人)の多くが、肉親からこのようなことを聴いている。それ故、本省人が7割以上を占める台湾においては、「親日感情」が保たれているのだと思われる。

 「外省人は強い性格」という表現には、さまざまな実体験が込められているのだろう。実際、今なお、台湾の政治、経済、マスメディアなどの主要部分は外省人によって押さえられているのだから。
 
 本書の著者・龍應台は、上述のように外省人。この人のドキュメンタリーの手法は、現場を訪ねて、関係者に会い、証言を記録するというオーソドックスなもの。しかし、このドキュメンタリーの対象は、1945年8月日本が敗戦し、1949年10月中華人民共和国が成立するまでの動乱の時代。結果的には、「二二八事件」「白色テロ」に象徴される中国国民党の(台湾に於ける)暴政を、動乱の時代の中で「相対化」することになってしまう。実際、台北の「二二八紀念館」の展示は、民進党・陳水扁政権から中国国民党・馬英九政権になって「二二八事件は、人権を抑圧した国際的な悲劇のひとつ」というような位置づけに変わってしまったように感じる。奇しくも、本書の視点と軌を一にしていることが、大いに気になる。

 あの時代、華人世界は、ひどい目にもたくさんあったが、今過去を見つめて、さらに未来を見据えている…こんな結論になってしまうと、これは「中国はひとつ」という神話を補強することにはならないか。そんなことまで考えてしまった。