早朝、「台湾総統府は3日夜、馬英九総統が7日にシンガポールを訪れ、中国の習近平国家主席と会談すると発表した」というニュースが伝えられ、TV、新聞などは、それぞれのカラー(政治的色合い)で解説を加えている。
だが、全くと言っていいほど伝えられていないのが、台湾人から見た今回の首脳会談。特に、中国国民党の独裁政治に反対して、台湾独立運動を続けてきた台湾人がどう見ているのだろうか。
「台湾の声」に次のような論説が掲載されたので、転載させていただくことにした。
国民党よ、ついに台湾を売り渡すのか
台湾独立建国聯盟日本本部委員長 王 明理
11月7日に総統・馬英九と中国の国家主席・習近平がシンガポールで会談すると台湾総統府が発表した。
日本のメディア報道が言うような、“首脳会談で「一つの中国」を中台交流の基礎として確認し、これを認めない民進党をけん制するとみられる”というような甘いものではない。
1895年から1945年までの日本統治下で、未開発の台湾島は近代社会へと変貌を遂げた。その宝の島を、わがもの顔に占領したのが中国国民党で、台湾人は我が家を乗っ取られた被害者である。
中国人による虐殺、戒厳令下の行動と言論の自由剥奪、「中国人化教育」に対して、台湾人は少しずつ努力して民主化に成功し、やっとの思いで、台湾人が政権を担えるまでにもって来た。来年の総統選挙で民進党の蔡英文女史が総統に選出されれば、台湾は新しい歴史の幕を開ける。
それを嫌う中国国民党の馬英九(総統)と中国共産党の習近平が、民主選挙の前に強引に台湾の運命を決めようと考えている。
台湾に70年間お世話になっておきながら、中国国民党は、相変わらず、台湾民衆の幸せを考えていない。彼らが一番に考えているのは、党の利益、中国人の幸せなのである。
どう考えても、国民党の生きていく場所は、もはや台湾にしかないはずである。他者を排除する中国人の激烈さは、国民党なら一番分かっているはずである。かつての内戦の折の容赦ない殺戮、文化大革命の時の大虐殺、チベット民族、ウイグル民族を殲滅しようとしている現在の共産党の狡猾な手段。国民党よ、それらを見てもなお、まだ、中国に未練があるのか。なぜ、温厚で優しい台湾人をこそ、自分たちの同胞として大切にしないのか。
台湾を中国に売り渡す権利は今の馬英九にはない。あってはならない。4年前の総統選挙の際、多額の賄賂と言葉巧みな表現で当選を果たしたが、現在では、馬英九を自分たちの代表として外交を任せる気持ちは台湾人には皆無である。むしろ、台湾人の利益に反する行動をしてきた馬英九に大反対するものである。
なお、各メディアは「1949年の分断後初の歴史的中台首脳会談」と書いているが、分断したのは、中国人同士の話であり、台湾人とは関係のない話であったことをもう一度、主張しておきたい。
『台湾の声』http://www.emaga.com/info/3407.html
2015.11.4 17:00
<中台首脳会談>目的は「中台の平和や台湾海峡の現状維持」
毎日新聞 11月4日(水)10時46分配信
【台北・鈴木玲子】台湾総統府は3日夜、馬英九総統が7日にシンガポールを訪れ、中国の習近平国家主席と会談すると発表した。1949年の中台分断後初のトップ会談となる。総統府によると、「両岸(中台)の平和や台湾海峡の現状維持」が目的で、共同声明の発表や協定の署名は行われない。馬総統は5日に記者会見し、会談の意義などについて説明する予定。
習氏が6、7の両日、シンガポールを訪れるのに合わせ、馬氏が7日に同国を訪れる。馬氏は2008年の総統就任以来、対中融和路線を促進。中国との関係改善に伴う台湾経済の発展などを政権最大の功績に掲げ、昨年2月には中台関係を主管する閣僚級会談が初めて実現した。馬氏は昨年11月に北京で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の場で習氏との会談を模索したが、中国側が「国際会議の舞台の場を借りる必要はない」として拒否したとされる。
来年1月の総統選では、対中関係改善を進める与党・国民党の劣勢が伝えられる。国民党側には、中台トップ会談を実現させて、独立志向が強い野党・民進党をけん制する狙いがあるとみられる。
総統選候補に関する世論調査によると、民進党の蔡英文主席への支持率が国民党の朱立倫主席を上回っており、8年ぶりの政権交代の可能性が増している。民進党は、中国が交流の基礎と位置づける「一つの中国」を認めていない。
トップ会談の実現には、中台関係の安定化が双方の発展につながるとアピールする目的もあるとみられる。しかし、台湾では野党を中心に、首脳会談が統一交渉に結びつくのではないかとの警戒感が強く、反発が出そうだ。