一昨日、突然、兵庫県から電話をいただいた。相手はH氏の奥様。突然だったから、ある予感がよぎった。そして、それは的中していて、H氏の突然の訃報だった。
H氏は長く開業医をされてきた。職業上、多忙で地元を長く離れられないこともあって、とりわけ音楽を愛されたのだろう。クラシック音楽に造詣が深かったが、その流れを汲む「ムード音楽」、中でもマントヴァーニ楽団(Mantovani and his orchestra)のカスケーディング・ストリングスを愛聴された。
もう30年近く前になるだろうが、CDが普及し、レコード(LP)がほぼ「過去の遺物」扱いになりかけていた頃、私は、マントヴァーニのアルバム(LP)が一向にCD化されないのに業を煮やして、ポリドール社(当時)に問い合わせたことがあった。それがきっかけとなって、H氏の存在を知ることになり、H氏ご夫妻にもお会いする機会を得た。
H氏からは、貴重なお話をうかがい、さらには重要な資料をたくさんいただいた。それは、「華麗なるマントヴァーニの世界」(2008年 ユーキャン発売、CD10枚組のマントヴァーニ集)のリリースとして結実した。このCD集は、今なお現役なのが、何よりだ。
マントヴァーニを知らない世代が多数派になり、H氏が亡くなられた現在、諸行無常の寂寥感を感じざるをえない。けれど、カスケーディング・ストリングスに心をときめかせた共通体験は、私の心の中にはしっかりと刻まれている。心より、H氏のご冥福をお祈りしたい。
往年のマントヴァーニ・オーケストラ(右端の指揮者が、マントヴァーニ)
マエストロ・マントヴァーニ
H氏のご尽力でリリースされた「華麗なるマントヴァーニの世界」(ユーキャン)
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