都月満夫の絵手紙ひろば💖一語一絵💖
都月満夫の短編小説集
「出雲の神様の縁結び」
「ケンちゃんが惚れた女」
「惚れた女が死んだ夜」
「羆撃ち(くまうち)・私の爺さんの話」
「郭公の家」
「クラスメイト」
「白い女」
「逢縁機縁」
「人殺し」
「春の大雪」
「人魚を食った女」
「叫夢 -SCREAM-」
「ヤメ検弁護士」
「十八年目の恋」
「特別失踪者殺人事件」(退屈刑事2)
「ママは外国人」
「タクシーで…」(ドーナツ屋3)
「寿司屋で…」(ドーナツ屋2)
「退屈刑事(たいくつでか)」
「愛が牙を剥く」
「恋愛詐欺師」
「ドーナツ屋で…」>
「桜の木」
「潤子のパンツ」
「出産請負会社」
「闇の中」
「桜・咲爛(さくら・さくらん)」
「しあわせと云う名の猫」
「蜃気楼の時計」
「鰯雲が流れる午後」
「イヴが微笑んだ日」
「桜の花が咲いた夜」
「紅葉のように燃えた夜」
「草原の対決」【児童】
「おとうさんのただいま」【児童】
「七夕・隣の客」(第一部)
「七夕・隣の客」(第二部)
「桜の花が散った夜」
「おい! タッちゃん。最近ケンちゃんの様子がおかしくないか?」
「そうだな、若ちゃん。最近、さっぱり姿を見せないよな」
「そうだべ…。ケンちゃんの奥さんから、昨夜電話が来てさ、主人、最近お邪魔していますか? って、申し訳なさそうな声で聞くんだよ。それでさ…、オレはとっさに、ハイ、来てますよ…って答えたんだけどさ。焦ったよ。あの奥さんが聞いてくるってことはさ、何か怪しいって思ってるんだべ。ケンちゃんはさ、飲めないから来なくても不思議はないんだけど、顔だけは見せに来てたからな…」
二人はスナック「唐獅子」で、ハイボールを飲みながら話している。
若ちゃんは、カウンターの内側。タッちゃんはカウンターの外側。若ちゃんは、このスナックのマスターで、若山富三。
タッちゃんは、若ちゃんの幼馴染の梅宮辰也。もうとうに定年退職している。
話題に上がっているケンちゃんも、二人の幼馴染だ。ケンちゃんは高倉健一といい、建設会社の社長をしている。
みんな団塊世代の男たちだ。
昔はみんな貧乏で、それでもそれなりに楽しかった。ケンちゃんの家は、父親が早くに亡くなっていて、特別貧乏だった。だからと言って、差別するものはいなかった。みんな仲良くやっていた。
三人の中で、若ちゃんは体が大きくて一番強かった。いわゆるガキ大将、親分だ。
三人は家が近所だったので、小中学校は同じ学校だった。学校の行き帰りは、いつも一緒だった。遊びもいつも一緒。悪さも一緒。
そんな三人は、中学を卒業すると、それぞれ別の道へ進んだ。
若ちゃんは私立高校に進学して、大学に行った。ところが、麻雀をしたり、パチンコ屋通いをしたりと、遊んでばかりで、大学を中退して帰ってきた。
そして、定職に就かず、アルバイトで水商売に足を入れて、そのまま今のスナックを経営するようになった。もう四十年近くなる。
その間、二人の奥さんと結婚し離婚した。だから、今は独身だ。最初の奥さんとの間にできた娘が、今はスナックを手伝っている。
タッちゃんは成績も何もかも普通だった。
タッちゃんは、叔父さんが警察官だった影響を受けて、道立高校を卒業して、警察学校に入った。その後警察官となり、道内を転々としていた。札幌勤務時代の上司の娘と結婚して、昇進も早かった。
最後は地方の町の警察署ではあったが、署長で警察官人生を終わった。
退官後は、帯広で奥さんと母親の三人で暮らしている。
五年ほど警備会社の管理職の仕事をしていたが、今は辞めて年金生活をしている。
ケンちゃんは中学校の時、先生に告げ口をしない級長として、男子に人気があった。
級長だったケンちゃんは、母親を助けたいと、職業訓練校に入り大工になった。
ケンちゃんは、頭が良くて呑み込みも早かったので、腕のいい大工となった。
そんなケンちゃんは、棟梁に気に入られ、特別目を掛けてもらっていた。頭が良かったケンちゃんは、一所懸命勉強して、五年後には独学で二級建築士の資格も取った。
これも、棟梁が勉強する時間を与えてくれたおかげだと、ケンちゃんは思っている。
ケンちゃんは、資格を取ったこともあり、二十三歳を過ぎたころから、現場から事務所に移り、設計の仕事をするようになった。
二級建築士の資格を取ってから、五年後には一級建築士の資格も取った。
ケンちゃんのいた鶴田工務店は、景気の良さもあって、どんどん大きくなった。
工務店だった会社も「東栄建設」という株式会社になった。
ケンちゃんの青春は、仕事と勉強漬けの毎日だった。人並みに遊んだことはなかった。
そんな黙々と働くケンちゃんを、社長となった棟梁はますます気に入っていた。
大工から棟梁となり、会社まで設立した苦労人の鶴田社長は、ケンちゃんと自分を重ねていたのかもしれない。
そして、ケンちゃんが二九歳の時だった。ケンちゃんは社長から、一人娘の浩子を嫁にもらってくれと頼まれた。どうやら、社長の娘がケンちゃんを気に入ったようだ。
社長の娘は、社長に似て大柄だったが、色白の美人で控え目な人だった。
しかし、ケンちゃんは、自分は中卒だし、大学を卒業した一人娘のお嬢さんとは結婚できないと、その申し出を断った。
社長はそんなことは承知で頼んでいると頭を下げた。目に入れても痛くない娘の気持ちを考えると、社長も必死だったのだろう。
「婿にとは言わない。とにかく、浩子と結婚してやってくれ。頼む」
そうまで言われては、ケンちゃんは断ることが出来ない。中卒の自分が、ここまでやってこられたのは、社長の恩義があってこそだと思っていたからだ。義理が絡むと嫌とは言えない。ケンちゃんとはそういう男だ。
こうして、ケンちゃんは、恋愛経験がないまま結婚した。
その後、娘二人と息子を一人授かった。
今は先代も亡くなり、ケンちゃんは社長となり、奥さんは専務となって現在に至っている。ケンちゃんは戸籍上こそ婿ではないが、実際は跡取りとして、社長に応えようと必死で働き、義理を通した。
長女は結婚し、道外で暮らしている。息子は外資系企業に就職し、海外で家族と暮らしている。次女は一度結婚したが、娘をひとり連れて離婚し、今は会社の経理をしている。
そんな真面目一筋のケンちゃんだが、二人との付き合いは続けていた。タッちゃんが、まだ現役だったころも、帯広に帰省したときは三人で集まった。酒も飲まずに付き合っていた。人情の厚い男なのだ。
そのケンちゃんが、最近姿を見せない。
「やっぱり変だよな、若ちゃん。あの奥さんが聞いてくるってことは、出かけてはいるんだよな。ここ以外の何処かに…」
「そうだよ、タッちゃん。何かあるんだべ、きっとさ…。タッちゃん、ちょっと調べてくれよ。気になるじゃないか。調べるのは得意だべ。元お巡りさんなんだからさ」
「そうだな。そこは昔取った杵柄ってことで…。ちょいと調べてみるか…」
「若ちゃん、いたよ。女だよ」
「女? あの真面目一筋のケンちゃんに?」
「そうだよ。あのケンちゃんに…、だよ」
「で、どんな女だよ?」
「それがさ、小柄で胸の大きい若い女だったよ。トランジスターグラマーってやつだよ」
「トランジスターグラマーは死語だべ。だけど、ケンちゃんの奥さんとは、正反対だべ」
「そうだよ。ケンちゃんの奥さんは、背は大きいけどペチャパイだからな」
「ケンちゃん、ボインに憧れてたんだべか」
二人は、クスクスと笑った。
「あの真面目なケンちゃんが…、分からないもんだな。若ちゃんならわかるけどさ」
「バカ言え。オレは二度で懲りたべ。タッちゃんだって、お巡りさんとは言いながら、そこそこ遊んだんだべ? 上司の娘じゃ、ストレスも溜まるべさ」
「オレは、若ちゃんほどではないよ」
「そんなことよりさ、詳しく話せよ」
仕込みをしながら、二人の会話を聞いていた若ちゃんの娘が口を挟んだ。
「二人とも、どうしてそういうイヤらしい想像しかできないのかしら…。高倉のオジサマに限ってそんなことはないわよ。パパとは違うんだから…。辰おじさんまで…」
「純子は黙っていなさい。これは男同士の友情の話だ。イヤらしいとかという問題ではない。これは、仲間としてケンちゃんを心配してやっていることだ。なあ、タッちゃん」
「あ、そうだよ、純ちゃん。だけどさ、久しぶりの張り込みは大変だったよ。ケンちゃんのヤサ(家)を張ってたんだが、さっぱり動きがない。あの日から四日目の水曜の夜だったよ。ケンちゃんが九時ころに、家から出てきた。しばらく歩いて本通りに出てから、タクシーを拾った。オレは車の中で張っていたから、そのまま後をつけた。そうしたら、名門通りで降りて、『牡丹』ってスナックに入っていった。店が看板になったら、ケンちゃんが一人で出てきて、近くの『昇竜』っていう寿司屋に入った。寿司屋を張っていたら、背が小さくて胸の大きい女が入っていった。そして小一時間で二人そろって出てきた」
「うんうん、それから…」
「ケンちゃんがタクシーを拾って、女に金を握らせて、タクシーを見送った」
「見送った? なんだべ…。ケンちゃんは乗らなかったのか? そこから先が、いいとこだべ…。寿司食わせて終わりかい?」
「そうなんだよ。オレも他人事ながら、ガッカリだよ。おいおい、ケンちゃん…って感じだったよ。だから、オレは女のタクシーをつけてヤサを突き止めた。結構立派なマンションだったよ」
「それで、その女のことは調べたんだべな、タッちゃん」
「そこはそれ、抜かりはないよ。翌日、ちゃんと聞き込みをしたよ。マンションのオバサンたちの話では、ちょっと派手めで、すっごいボインだそうだよ。背は低いんだけど、よその男の人から見たら、ちょっと可愛いし、声かけてみようかなって思うかもね…なんて言う人もいた。オバサンたちの印象は、派手で男の人には魅力的なルックス…ってことらしい。しかし、それだけではない。オバサンたちの話では、口が上手だから、男の人はうまいこと手玉に取られてるんじゃないか…と話してたよ。水商売だってことは知ってるみたい。あ、本名は小池玲子。前はない」
「そんなにいい女なのかい、タッちゃん」
「昼間、面を拝んでないからわかんないよ。それでさ。『牡丹』って言うスナックに行ってみた。竜子ママの話では、その女は水曜日だけのアルバイトだそうだ。大学生だと言ってるそうだよ。竜子ママの話では、胸元が大きく開いた服を着ているし、甘ったるい声でしゃべるから、その女目当てのオヤジもたくさんいるそうだよ。源氏名はアケミ。これもオヤジにはたまらんよ。オレたちには懐かしい名前じゃないか…。昔はどこの店にも1人はいたよ、アケミって女がさ。オレに言わせりゃ、その竜子ママのほうがずっといい女だったけどな。四十五、六でツーとしててさ」
「でも、寿司屋だけでは、何とも言えんべ。せいぜい手を握るのが関の山だべ…」
「そうだよな。もう少し探るよ」
「若ちゃん、あの女、とんだ食わせ者かもしれないよ」
「なんだいそれは?」
「あれから暫く張ってみたんだ。夕方出かける時に見た面は今どきの若い子だったよ。付け睫毛をして目はパッチリした茶髪の女だ。水曜日だけどころか、毎日、胸元の大きく開いた派手目のミニスカートで、ご出勤だよ。それも、日曜日以外毎日違う店なんだよ」
「毎日違う店? なんだいそれは?」
「オレも不思議に思って、店で確認したよ。どの店のママもマスターも、大学生のアルバイトだから週一だ…って言うんだよ。どの店も口を揃えて、客は年寄りばかりだって…」
「なんだいそれは? どういうことだべ?」
「そう思うだろう。そして必ず毎晩アフターにジジイがお付き合いだよ。それも、全員ラーメン屋、寿司屋、焼鳥屋。食い物屋ばかりで小一時間でバイバイだよ」
「それじゃ、ケンちゃんも、そのジジイたちと同じってことかよ」
「そうだよ。あのジジイたちと同じだよ。ケンちゃんは、決まってあの寿司屋…」
「だけどさ、寿司屋だけでは女が出来たってことにはならないべな…」
「うん、今のところは…」
「だから、高倉のオジサマは、パパたちとは違うのよ。何か事情があるのよ」
「純子、前にも言っただろ、口を挟むなってさ…。これは、男同士の友情の話なんだ」
二人は顔を見合わせて考え込んだ。
「若ちゃん、聞いてきたよ」
「ケンちゃんに、直接聞いたのか?」
「ああ、直接聞くしかないだろう」
「それでどうだった?」
「いやはや、驚いたよ」
「驚いた? 何をどう驚いたんだよ。もったいぶらずに、早く話せよ」
「聞いて驚くなよ」
若ちゃんは、身を乗り出して、カウンターに手をついた。タッちゃんが、話し始めた。
「ケンちゃんの会社の事務所じゃ話が聞けないから、行ったことがない喫茶店に呼び出して聞いたよ。おい、ケンちゃん、最近オレたちに隠してることはないか? ってね。そしたら、ケンちゃんは、ないよ…って答えた。だからそんなことはないだろうって、ハッキリ聞いたんだよ。アケミって女はなんだいってね。そしたらケンちゃん話始めたよ。なんだよ、タッちゃん…、知ってたのかい。あのアケミちゃんはさ、真面目な女の子なんだよ…って、ケンちゃんは言うんだよ。小さいころに父親を亡くして、顔は写真でしか知らないそうだ。それで、母親が一人で苦労して育ててくれたそうだよ。小学校の頃、子犬を拾ってきて育てていた。その子犬が話し相手だったそうだ。ところが、中学生になったころ、その犬がね、病気で死んでしまったそうなんだよ。とても悲しかったそうだ。だから、ペットの医者になって、自分のような悲しい思いを子どもたちがしないように、T大学で獣医の勉強をしてるそうだ。母親に頼ってはいられないので、週に一日だけ、水商売でアルバイトをしてるって…。週に一度では大変だろうって、毎月、いくらか援助してやってるそうだ。そして、たまには、美味しいものを食べなよって、寿司を食べさせたら、美味しいって食べたそうだ。だから、行くと毎回寿司を食べさせてあげる…って嬉しそうにケンちゃんは言ってたよ。きっとさ、ケンちゃんは、昔の自分とその女を重ねてるんだよ」
「なんだい、タっちゃん。それじゃあさ、ケンちゃんは、すっかりその女に騙されてるってことだべ…。そんな話は嘘っぱちだべ」
「そうだと思うよ。それでね、一線は超えたのか? って聞いたんだよ。そしたら、一線って何だよ。そんなことが出来る訳ないだろうって、ケンちゃんは怒っちゃって…。ケンちゃんらしいよ。いじらしくて、可哀想な娘なんだよ…って言ってさ」
「可哀想だか…。可哀想だと言ったのか…。可哀想だたあ、惚れたってことよ…ってさ、彼の夏目漱石先生も言ってるじゃないか」
「そうだね、若ちゃん。オレもそう思うよ」
「それってさ、ケンちゃんの、初恋だべか」
「そうだよね。オレもそう思う。ケンちゃんの初恋だよ。だから、オレ本当のことが言えなかったよ。どうしようか? 若ちゃん」
「どうするって、一線は越えてないんだべ。だったら、問題ないべ。そっとしとくべ」
「そうだな。あのアケミって女も、いつまでも女子大生やってられないだろうから…」
「ケンちゃんの奥さんにはさ、オレんとこへ来てる…ってことにしといたらいいべ」
「だけどさ、ケンちゃんが、あんな小娘に騙されるなんて…。オレたちも若いと思っていたけど、ジジイになったってことだな…」
【かってにせんでん部】
minimarche
080-0018 帯広市西8条南6丁目7番地
ハーブティーは下記のお店「雑貨(Tkuru&Nagomu)で取り扱っています
雑貨(Tukuru ・nagomu) 0155-67-5988
可愛い雑貨も、たくさんありますよ。
Cafe & Bsr Noix(ノワ) 0155-67-5955
落ち着いた雰囲気で、ゆっくり食事ができます.
http://www.d-kyoya.com/minimarche/
株式会社ディステリア京屋
080-0018 帯広市西8条南6丁目7 ☎0155-22-2151
↑:友人がオーナーの店です
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絵手紙セット 葵+顔彩24色 |
クリエーター情報なし | |
オリジナル
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マルマン ポストカード 絵手紙用 画仙紙(越前) 手漉き S133C 100枚 |
クリエーター情報なし | |
マルマン(maruman) |
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ナツツバキ 樹高0.7m前後 15cmポット なつつばき シャラ 夏椿 苗木 植木 苗 庭木 生け垣 |
クリエーター情報なし | |
季の香 |