今回の公演は、慣れ親しんだ青山円形劇場からプロセニアム形式の舞台、
いわゆる『額縁舞台』の東京芸術劇場に代わったと云うこともあって、
色々と不安要素が有りました。
とりわけ、感じて居たのは、お客様との距離感。
円形劇場の時は、目の前にお客様がいて、今回の劇場に比べたら、
1番後ろの席でも、今度の舞台で言えば半分より前の距離。凄く近くに居た。
その上、円形劇場は約270度の角度で客席があったので、舞台上に居ても、
背中の方向にも観客がいて、台詞の声の大きさや、芝居をする時の体の向きなど、
観客の居る位置を余り意識しないでも良かった部分が有りました。
ところが今回は、一般の劇場に変わったために、今までどおりにやっていると
お客様にお尻を向けてしまうことがしばしば見受けられた。
稽古の時に、そのあたりは意識してやって居ない人が、意外と多かったですね。
まぁ、年寄りが多いので、簡単に変えられなかったのかもしれません。
ただ今回、円形劇場と明らかに違うものがありました。
それは『観客』、お客様の皆さんです。
芝居って言うのはライブだから、お客様の乗りが悪いと演者も乗らない。
これは芝居に限らず、音楽のライブでも同じ。
極端な話、講演やプレゼンテーションでも、こういう事が顕著にある。
新商品の説明などなんか、お客様の『おぉ・・・』という反応だけで、
説明している方も乗ってくるし、結果的にお客様も引き込まれてゆく。
今回の芝居は、まず『お客様の質の高さ』を感じましたね。
いつもそうなのだけれど、最初の唄M1が終わった時に拍手が来ると、
その後の芝居がやり易くなる。
良くあるのが、どこで拍手をしていいのか解らないこと。
これ、音楽のライブでもあると思いません?
ソロを取った後に、拍手していいのか?タイミングがつかめない事・・・・
芝居ではお客様の拍手や、笑いが一つのリズムになります。
たぶん、お笑いでうけない時、落語で笑えない時に似ているのかも知れません。
演者が、だんだん萎縮してくるから、ますます面白くなくなる。
どんなものでも、肩に力が入ったものはどこかに無理がある。
音楽の演奏も『聴かせてやろう』なんて力んだ演奏は、意外とつまらないものです。
僕はそういうライブには行きません。
肩の力が抜けて、伸び伸びしているからこそ素晴らしいプレーが飛び出す。
サッカーも一緒ですね。
2日間、4回の公演に約950名のお客様にご来場いただきました。
温かい拍手や、笑い・・・・舞台上で、お客様から来るエネルギーを感じました。
お返しに、我々もお客様に『元気』をお分けすることが出来た気がします。
そういう意味で、今回のお芝居で一番上手だったのは
『お客様』だった気がします。