ON  MY  WAY

60代になっても、迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされながら、生きている日々を綴ります。

ちあきなおみの「ねえあんた」を聴きたくて「微吟」を買う 

2022-12-13 20:36:20 | うた
学生時代にFMから流れてきた歌に、聴き入ったことがある。
その歌声は、ちあきなおみの声だった。

ちあきなおみは、「喝采」でレコード大賞を受賞して、たしかにすごい歌手だと思ってはいた。
だが、それ以前に歌っていた「四つのお願い」とか「X+Y=LOVE」などは、学生の頃の自分には、色っぽさで売ろうとしているように感じて、あまりよい印象はもっていなかった。
それが、ラジオから流れてきた曲は、「もう一度聴きたい」と思わせるほどのものだったのだ。
どうやら、コンサートか何かで歌った1曲だったようで、歌い終わった後には、聴衆の大きな拍手も響き渡っていた。

後日調べてみると、「ねえあんた」という曲だということがわかった。
リサイタルで歌い、その録音盤から流していたらしい。
もう一度聴いてみたくても、2枚組の実況録音盤レコードとしての販売では、さすがに、とても高価に感じられて買うことはなかった。
ほかの聴きたくない曲まで入っているわけだし。

その後、いつの間にか、ちあきなおみは歌手活動を休止してしまっていた。
1992年に夫を亡くしてから、そのまま引退してしまったような形になっているとのことだった。
その歌唱の実力を知っている多くの人が、ずっとその復帰を願っていたようだ。

10年ほど前には、「ちあきなおみに会いたい」(石田伸也著;徳間文庫)という本を読んで、私ももう一度落ち着いて彼女の歌を聴いてみたいな、と思うようになった。
ただ、「全曲集」や「ベスト」のようなものには、いわゆる聴きたくない曲も入っているので、なるべく気に入ったものだけを聴きたいと思っていたが、特によいものはなかった。

私が聴きたかったのは、
「ねえあんた」のような、まるで一人芝居のような曲や、
友川かずきから提供された「夜へ急ぐ人」、
石川さゆり、稲垣潤一、岩崎宏美、高橋真梨子、吉幾三、さだまさし、中森明菜、薬師丸ひろ子らがカバーした「黄昏のビギン」
…などを中心にした選曲のものだった。

先日、急に彼女の「ねえあんた」のことを思い出し、聴きたくなった。
それでAmazonで調べてみると、自分好みの曲ばかりが集められたアルバムが、3年前に出ていたことを知った。
そのアルバム名は、「微吟」という。



微吟…びぎん…ビギン?
てっきり彼女が歌って発掘された名曲「黄昏のビギン」から漢字を当てたものだろうと思っていた。
だが、「微吟」という言葉は造語ではなかった。
辞書によると、
「微吟」とは、「小さい声で詩歌をうたうこと。低くかすかに吟ずること。詩歌を口ずさむこと。」なのだそうだ。

注文して届いたCDで、久々に「ねえあんた」を聴いた。
やっぱり、とてもよかった。
男性に語りかけているような歌なのだが、その彼を心配している様子の表現がすばらしい。
一人で、話すように歌う声を聴くと、その近くに誰か男性が本当にいるように聴こえる。
歌に登場する女性の悲しさが伝わってきた。
すごいなあ…。

そのほかに、「黄昏のビギン」や「星影の小径」、「喝采」などもやはりすばらしかった。
「微吟」というアルバムタイトルは、確かにぴったりだと感じた。
1曲だけなら「ねえあんた」だって、YouTubeで金をかけずに聴ける。
だけど、それ以外の曲も聴けるから「微吟」を購入したことは、自分としてよい選択だったと思った。
コメント
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