ON  MY  WAY

60代を迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされ生きる日々を綴ります(コメント表示承認制です)

「木暮荘物語」(三浦しをん著;祥伝社)を読む

2023-01-18 22:14:36 | 読む
先月、NHKBSプレミアムで、映画「舟を編む」を見た。



松田龍平や宮﨑あおいの好演もあって、原作を思い出しつつ、楽しく見た。
原作者が、三浦しをん。

彼女の作品は、「舟を編む」のほかに、「風が強く吹いている」や「まほろ駅前多田便利軒」がある。
ウイキペディアでは、この3冊が代表作と書いてあった。
いずれも、情熱を秘めている主人公が活躍する話だった。

先月テレビで見た映画の影響で久しぶりに、彼女の作品を読みたくなって、図書館へ行って借りてきた。

どれにしようかなと思いつつ、短編の連作で構成されている「木暮荘物語」を選んだ。



東京の少し郊外にあるオンボロアパートを舞台に、その住人や大家、彼らを取り巻く人たちの人間模様が描かれている。
短編ごとに主人公が入れ替わる。
それぞれの主人公の視点で、話が展開していく。
こちらの章ではこの人の思いが描かれ、あちらの章では、同じできごとが別な視点から描かれるから、違って見えたりする。
そんなことを繰り返しながら話が進んでいくから、登場する人物一人一人に対する読み手の理解も深まり、感情移入していく。
どの人物も、魅力的に見えてくる。

ただ、この物語は、若いときではなく年齢を重ねてから読む方が面白く読めるのではないかと思う。
それは、人間関係や愛情関係とかかわる性愛の問題などが、非常にストレートに語られているからだ。(といっても、いやらしいわけではない。)
だから、時に登場人物がそれぞれちょっぴり変態的に感じられてしまったりもする。
読み手には、それを理解してあげられる度量が必要だ。
登場人物の年代も、20歳過ぎから70歳過ぎまで幅広いから、人生いろいろ経験してきた人の方が、人物の気持ちにうなずけるのではないかと思う。
そうは言ってみたが、著者の三浦しをんは、30代でこの作品を書いていたのだから、恐れ入る。

最後の章では、最初の章でおかしな人物として出てきた人物が主人公となり、物語の仕上げにふさわしい(?)活躍と結末を迎え、よかったなと読後感もさわやかに終わる。
この物語には代表作のような情熱的な人物は登場しないが、個性的な人物が次々に登場し、人間らしい悩みや行動が読み手を引き付けてくれた。
そんなところに、三浦しをん作品の面白さを十分に味わったのであった。
コメント
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