ON  MY  WAY

60代を迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされ生きる日々を綴ります(コメント表示承認制です)

「吉田拓郎 終わりなき日々」(田家秀樹著;角川書店)を読む

2023-01-26 20:00:18 | 読む

先日、図書館で本を探していたら、分厚い1冊が目に留まった。

それが、「吉田拓郎 終わりなき日々」(田家秀樹著;角川書店)。

いつごろ出た本かと言えば「平成22年6月30日初版 発行」と書いてあった。

いささか古く、今から13年近くも前の本になる。

ページ数にして487ページもある単行本。

中身をぱらぱらとめくって見ると、インタビューなどを丁寧に再現しているせいか、結構文字でびっしり埋まっている。

これを全部読むのか、と思うと、普通ならやめておこうとなるのだが、今回は迷った。

なぜなら、吉田拓郎は、去年最後のアルバム「ah-面白かった」を出して、音楽活動から引退したのだった。

そのアルバムを聴いてみてのことは、前にここでも書いた。

 

 

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さて、本書に書かれているのは、もう13年も前のことになるのだが、その頃も体調不良によるコンサートツアーの中止などが相次いだ。

その頃、彼はどんなことを考えていたのだろうか。

どんなことからツアーが中止になってしまったのだろうか。

もう引退してしまった彼のことだからこそ、知りたくなった。

迷った末、借りてきた。

 

この本は、田家秀樹氏による、密着ドキュメント。

そういう言葉が当てはまる。

 

中心になるのは、最後の全国ツアーと称して行っていた2009年6月スタートの“Have A Nice Day LIVE2009”のできごと。

そのツアーは、結局途中で中止されてしまった。

その代替ツアーがされることもなかった。

なぜそのような事態になってしまったのか、吉田拓郎はどのように考えて「最後のツアー」と称したツアーに臨んでいたのか、などが分かる1冊であった。

 

それ以前の2003年の癌の手術を経て復帰した拓郎だったが、それ以降の6年間にわたる彼の軌跡が描かれてあった。

内容は、大きく言って3章に分かれる。

1章目は、「ガンバラナイけどいいでしょう」

2008年のエイベックスへの移籍や2009年のアルバム「午前中に…」に関することから始まる。

2章目は、「早送りのビデオ」

ここでは、2004年の復活のツアーや2006年の「吉田拓郎・かぐや姫 コンサート イン つま恋」を中心にしながら、1975年の伝説的なつま恋での12時間の野外コンサートにもふれる。

3章目は「俺を許してくれ」

最後の全国ツアーとなるはずだった2009年の“Have A Nice Day LIVE2009”。

そのツアーに密着して、拓郎の言動を書き表すことによって彼の真の姿を浮かび上がらせることに成功していた。

だが、体調不良に陥ってもなんとか続けようとしていたが、結局ツアーはまたしても無念の中止となってしまった。

拓郎へのインタビューは、その後にもなされていた。

そのインタビュー内容が、最も興味を引きつけられる面白いものであった。

 

著者の田家氏は、吉田拓郎の様々な言動やエピソードから、彼の人間性を浮き彫りにした。

時代の寵児と呼ばれたこともあったが、彼は、音楽が大好きだったのである。

多くの人に自分の作った音楽、よりよい音を聴いてもらいたい、ということで、彼の人生は一貫していたのだ。

それを、周囲が様々なレッテルを貼ったり、本人の意思によらない見方をしたりすることによって、ねじ曲げられてきたのだということが、著者の文章から伝わってきた。

あとがきには、次のようなことが書いてあった。

2010年は、吉田拓郎のデビュー40周年にあたる。

“最後の全国ツアー”に至る数年の日々の中で、彼が見せていたものは、若い頃よりも心身ともに音楽に没頭しようとする姿であり、力尽きるまで“吉田拓郎”として歌おうとする執念のようなひたむきさだった。

 

分厚い1冊を読み終えて、この書名「終わりなき日々」は、吉田拓郎と彼の音楽には終わりがないというような意味ととらえることができた。

しかし、それから10余年、彼の音楽活動は終わりを迎えた。

 

ただ、終わった後になってしまったとはいえ、本書で拓郎の音楽に対する深い情熱にふれることができたのは、自分にとってもとても幸福なことだった。

30数枚持っている拓郎のレコードやCDを、これからも聴くことはきっとあるはず。

彼の音楽への気持ちを思いながら聴くと、きっと今までとは違うことを感じることだろう。

 

コメント
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