前半8分間の長いアディショナルタイム。
実際は10分間近くあっただろう。
それを足してみると、55分と1時間近くプレーしていたはずだった。
「あれ?でも、アルビ、シュート1本も打っていないんじゃないか?」
スコアは、1-0の新潟リードでハーフタイムに入ったのだった。
「あっ、そうか。シュートだなんて意識はなかったけど、PKで小野がゴールを決めていたのだった。」
「でも、プレーの流れの中からシュートに持ち込めたのが1本もなかったということだね。」
…こんなふうに、1本もシュートを打っていないと錯覚するほど、前半は敵陣に攻め入ることができなかった。
唯一の1本は、ダニーロが勇気をもってペナルティーエリアに走って入って行ったからこそ、相手GKが焦ってファウルをおかして得たPKだった。
しっかり相手の逆を突いて決めるんだから、さすが小野だったね。
ただ、前半終了時点で、相手の京都の方がボールの支配率も上だった。
どのチームも、新潟の戦い方をよく知り、対策をするようになってきた。
まず、前から厳しくプレッシャーを与えてくる。
自由にパスを与えさせないようにしてくる。
京都は、曺キジェ監督の下、動きが徹底されていた。
さすが、最近好調なだけある、と思え、手強さを感じた。
新潟は、いつもよりも、ボールを保持することにこだわらず、長いボールも蹴るなどして対応していた。
そこには、最近の失点癖を露呈しないようにという細心の注意が感じられた。
だけど、このままじゃ、もし同点に追いつかれたら勝ち目がないよな、なんとか攻めてほしいなと思いつつ、後半の開始を待った。
後半が始まると、一気に3人の選手交代をした京都に対し、新潟は電光石火のパス交換で惜しいシーンを作り出した。
デン→堀米→元希→小野とわたったボールがゴール前の長倉に出されたが、蹴ったボールは無情にもゴールポストに当たった。
あれが決まっていれば、まさにスーパーなゴールだった。惜しかった。
そこからは、ほぼ互角の展開ながら、時折相手のシュートに脅かされるときもあったが、小島が防いだり枠を外したりして、失点を防ぐことができていた。
67分、新潟は一気に3人替え。
ダニーロ→松田、小野→谷口、元希→鈴木
小野も頼りになるが、FW鈴木の復活も心強い。
きっと何とかしてくれるはず。
その思いがすぐに実現するのだから、やっぱり頼りになる。
70分、舞行龍からボールを受けた鈴木が、タイミングを計りながら、右の松田にパスを送ると、松田はドリブルでエリア内に進入し、ゴール前にセンタリングを上げた。
ゴール前にいた長倉は、ジャンプすると見せかけて頭をひょいと下げる。
それは、後ろから走り込んできた谷口にシュートを譲るためだった。
ドーン!…と音がしたのではないかと思うようなヘディングシュートがゴールネットを揺らし、新潟追加点、2-0。
ゴール裏に走って行った谷口もそうだが、センタリングを上げた松田も周囲からバシバシと手荒い祝福を受けていた。
このあとは、潟るなよ、潟るなよと願いつつ、試合を見守った。
磐田戦のようなのは、もうこりごりだったからね。
危ない場面もあったが、新潟は、前節の教訓を生かし、守り切った。
2-0のクリーンシート達成。
よく守ったと言える。
前半だけ見てたら勝てるとは思わなかったが、後半は攻める場面も多くなり、いつもの新潟に戻ったような気がした。
この試合は、時間があると選手同士の話し合いがしょっちゅう行われていた。
細かいすり合わせが試合中何度も行われているのだな、と見ることができた。
そのあたりに、選手たちのどうしても勝ちたいという気持ちが現れていて、それがこっちにも伝わってきた。
試合後、緊張の中のPKを決めた小野がヒーローとしてスクリーンに登場。
大きな1勝だ。
試合前はこんなだった順位表が、試合後はこう変わった。
不思議なもので、1勝して2つ順位が上がっただけで、残留争いをしていたのが、急に中位に迫ったような気がする。
まあ、そのくらい今季のJ1は力が拮抗しているのかもしれない。
ならば、下位より上位だ。
まずは連勝して中位に復帰し、そこから上位進出を図ろう。
Visca Albirex !!!