ON  MY  WAY

60代を迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされ生きる日々を綴ります(コメント表示承認制です)

「松岡まどか、起業します ―AIスタートアップ戦記― 」(安野 貴博 著;早川書房)を読む

2024-12-10 21:04:20 | 読む

これは、今年出た本だ。

本書の帯には、こう書いてあった。

22歳の非力な新卒社長のミッションは たった1年で 10億円企業を作ること⁉

AIエンジニア&起業家にしてSF作家が描く、令和最強のお仕事小説!

 

出版元は、早川書房。

早川書房と言えば、SFやミステリー関係のイメージが強い。

なのに、お仕事小説?

 

ということから、著者の安野貴博氏についてちょっとGoogleで調べてみると、

どーんと出てきてびっくりしたのが、

「安野たかひろ(東京都知事候補)公式ホームページ」という文字列。

えっ!?この人、東京都知事選に出ていたの!?

 

 

そこをのぞいて、「プロフィール」を見てみたら、

テクノロジーを通じて未来を描く」活動をしてきた33歳・無所属のAIエンジニア&起業家&SF作家。 1990年、東京生まれ。東京都文京区育ち。

だって。さらに、

開成高校を卒業後、東京大学工学部システム創成学科へ進学。「AI戦略会議」で座長を務める松尾豊教授の研究室を卒業。外資系コンサルティング会社のボストン・コンサルティング・グループを経てAIスタートアップ企業を二社創業。デジタルを通じた社会システム変革に携わる。日本SF作家クラブ会員。

 

へえ~。

この安野氏、先の都知事選に立候補し、5位の得票数15万4638票を獲得していたのだそうだ。

AIエンジニアだけあって、「テクノロジーで誰も取り残さない東京へ」をスローガンに、AIやSNSを駆使した選挙戦を戦ったようだった。

 

さて、そんな安野氏が書いた小説だ。

これは、サイエンスに関するから、早川書房なのか、と思いつつ読んだ。

ちなみに、表紙のカバー裏には、こんな紹介文があった。

 

日本有数の大企業・リクディード社のインターン生だった女子大生の松岡まどかはある日突然、内定の取り消しを言い渡される。さらに邪悪な起業スカウトに騙されて、1年以内に時価総額10億円の会社をスタートアップで作れなければ、自身が多額の借金を背負うことに。万策尽きたかに思われたが、リクディード社で彼女の教育役だった三戸部歩が松岡へ協力を申し出る。実は松岡にはAI技術の稀有な才能があり、三戸部はその才覚が業界を変革することに賭けたのだった――たったふたりから幕を開ける、AIスタートアップお仕事小説!

 

出てくる社名等も、リクディード社、ビズリサーチ、ユアナビなど…よく聞く名称をもじっているから、連想できるのが楽しい。

おそらく自身の経験がもとになっている部分があるのだろうけれど、専門的な知識を持たないと分からないと書けないよなあ、と感心した。

それゆえ、ITの専門用語や経済用語は、私のような門外漢には聞きなれなくて分からない言葉の連続だった。

ローンチ、ギーク、アサインする、ベットする、ファインチューニング、プロンプトチューニング、エレベーターピッチ、ピボット、LLM…etc。

でも、門外漢でもシロウトでも、話自体は面白い。

なんてったって、主人公の松岡まどかは、起業するとはいえシロウト。

そのシロウトゆえ、様々な困難に会うが、AIを頼りにしながら前に進んで行くのだ。

色恋沙汰は全く出てこないが、とても面白かった。

 

SFの早川書房だから、これはサイエンスフィクションにすぎないのか。

いや、なるほどと思うところが多いから、きっとこの小説に書かれてあることは、もうフィクションではないのだろうな。

安野氏の専門的な知識が生かされた小説だ。

ドラマになったら、きっと受けるだろうなあ。

「ミッションはAIで働く人を助けること」

「世界に君の価値を残せ」

うーん。響いてくる言葉だなあ。

 

この松岡まどかのその後がどうなっているのか、続編が生まれてもいいな、と思った作品であった。

安野氏の広く深く豊かな才能、なかなかすごいですね。

コメント (2)
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