1週間前、箱根駅伝に出場する大学の16人のエントリーメンバーが発表された。
だんだん、その本選の日が近づいてきた。
その箱根駅伝は、今度で101回になる。
ずいぶん伝統のある大会だ。
その箱根駅伝をテーマにした池井戸潤の小説がある。
「俺たちの箱根駅伝」だ。
これは、「週刊文春」に、2021年11月11日号から2023年6月15日号まで連載されたものだ。
連載当時から、単行本化を望む声が多かったと聞く。
それが、上・下巻の2冊になって、今年4月25日第1刷発行になった。
読んでみたいな、と思ったが、1冊「1800円+税」。
上下巻で2冊買うと、4000円近くかかってしまう。
だから、図書館から借りるしかないかな、と思って、初夏に最寄りの図書館で検索したら、あるにはあるが、なんと予約者が10数人!
さすがの人気だ。こりゃあ、時間がかかりすぎる。
しばらく、あきらめよう。
そう思ってから、早いもので半年。
先日図書館に行ったら、返却本の本棚に、「俺たちの箱根駅伝」が上下巻そろっておいてあるのが目に入った。
これは、ラッキー、もう借りるしかない。
さっそく借りてきて、ページを開くと、引き込まれて一気に読んだ。
さすが話題作、さすが池井戸潤、面白かった。
本作は、ウイキペディアによれば、
箱根駅伝本選での活躍を目指す大学陸上競技部のランナーたちと、中継を担うテレビ局の裏側を描く群像劇。
箱根駅伝本選を目指す予選会から本選までの様子を描いた第1部(単行本上巻)と、箱根駅伝本選の様子を描いた第2部(単行本下巻)からなる2部構成。
たしかにそうなのだが、紹介し足りないのが、「箱根駅伝本選での活躍を目指す大学陸上競技部のランナーたち」のことだ。
この話に登場する彼らは、予選会で敗れた大学から選抜された関東学生連合のチームメンバーだ。
21番目のチームとして箱根駅伝を走ることはできるが、チームとしても個人としても順位はつかない。
そんなチームだから、出場する意味があるのか、という疑問を持つ人もいる。
寄せ集めの連合チームだから、チームワークもとりにくいし、走る目的や目標を共通にすることも難しい。
この物語では、そんな「関東学連」チームの奮闘を描いている。
そして、箱根駅伝と言えば、日本テレビだが、この物語では、「大日テレビ」という架空のテレビ局の話として、ストーリーが展開される。
ちゃんと本の最後には、「本作品はフィクションであり、実在の場所、団体、個人等とは一切関係ありません。」と表記されている。
だが、箱根駅伝をテレビ中継する企画を立て実現に尽力した伝説のプロデューサー坂田信久氏や、坂田を支え「箱根駅伝 放送手形」という台本を自ら作って番組を構成したディレクター田中晃氏は、実在の人物である。
また、箱根駅伝の放送に要する中継場所やカメラの数等も正確だ。
そんなところからも、作者池井戸潤氏の取材の細かさ、広さ、深さを感じた。
だから、「不可能」と言われた箱根中継を成功させた伝説の男から、現代にまで伝わるテレビマンたちの苦悩と奮闘を描くことができているのだろう。
単純にランナーたちだけを描くのではなく、番組を作るテレビマンたちの深い思いにも寄り添って物語が進むから、面白さが増すのだ。
ネタバレになってしまうのは惜しいから、これ以上ストーリーにふれるのはやめておく。
ただ、さすが池井戸潤氏の作品だ、とそれだけは言っておきたい。
箱根駅伝にかけるランナーやテレビマンたちの思いをのぞき見たような気がする。
フィクションとはいえ、この小説で知った事実も多い。
2週間後となった、箱根駅伝がますます楽しみになったよ。