「甲子園は、清原のためにあるのか!?」
そんな37年も前のテレビアナウンサーの叫び声を、まだ覚えている。
PL学園で活躍していた清原和博選手のホームランに、みな驚かされたものだった。
あの当時、プロ野球での活躍も期待されていた。
だが、ドラフト会議で彼が自分で信じていた未来は暗転する。
熱望していた巨人は自分を指名せず、その巨人が指名したのは、よりによって早稲田大学進学を表明していたチームメートの桑田真澄選手だった。
入団した西武ライオンズでは中心選手として活躍したし、その後自分が望んだ巨人に移籍もした。
だが、オリックス移籍を経て引退した後、覚せい剤の使用が発覚して逮捕されてしまった。
その清原氏の現在(最近)を追ったドキュメント本がこの本だ。
清原氏自身や、高校時代や現在の彼を取り巻く人たちを取材したので、今まで知らなかった彼の若い頃からの性格のことや厳しかった高校の寮生活のことなどについて新しく知ったことも多くあった。
また、今も薬物の後遺症なのか鬱症状で苦しんでいることや、甲子園球場を再訪した日のことなどについてもかなり詳しく書いてある。
だけど、読後感としては、もやもやした気分が残ってしまう本だった。
以前に読んだこの著者の、落合監督を描いた「嫌われた監督」は面白かったが、本書はすっきりしなかった。
本書では、たしかに人物のありのままの姿を書いてはいる。
苦悩も伝わってくる。
だが、著者自身が追うのをやめたり何を書こうとしているのかはっきりしなかったりしていたこともあり、書中に出てくる人物が言ったように、本書で何を伝えたいのかが不明瞭な気がした。
出てくるエピソードが、暗いものばかりでうっとうしかった。
追ったのなら、何か光となるようなものを見つけ、そこに焦点を当てて書いてほしかった。
私には、消化不良感が強い。
結局、著者の清原氏を巡る旅は、行ってみた、見てきた、というだけで終わってしまったように感じ、残念な気がする。
ただ、清原氏については、あれだけの活躍をした人だし、このまま終わってほしくはない。
これらも何らかの形で野球に関わっていってほしいと願うばかりである。