今月になり、プロ野球の各チームがキャンプ・イン。
テレビのニュースで流れていたので一番多いのが、去年日本一になった横浜DeNAベイスターズ。
去年は、セントラルリーグの3位だったのに、2位の阪神タイガースも、優勝した巨人をも打ち負かして、日本シリーズに進出してしまった。
それだけではなく、日本シリーズでも波に乗って、パシフィックリーグで圧倒的な勝率を誇ったソフトバンクホークスを撃破した。
「下剋上」と言われる優勝だった。
前年度日本一のチームだから、注目度も高い。
去年は、そこまで強かったチームだけど、実は、セントラルリーグ6チームの中で、最も優勝回数の少ないチームなのだ。
だけど、面白いことに、セリーグでの優勝回数は2回しかないのに、日本一の回数が3回とは。
これは、去年のクライマックスシリーズに勝ったうえでの日本シリーズ優勝ということだ。
勢いに乗ると強いということなのかな。
私の好きな阪神タイガースよりも、日本一の回数は多いじゃないか。(阪神2回、横浜3回ですけどね)
タイガースも熱狂的なファンが多いけど、去年はベイスターズファンもなかなかだな、と思ったよ。
今回借りた本は、「一瞬の風になれ」を書いた佐藤多佳子氏の「いつの空にも星が出ていた」(講談社)という一冊。
佐藤多佳子氏の他の作品はまだ読んだことがなかったので、これを借りてみようかと手に取ったのだった。
あとで調べてみたら、発行元の講談社は、本書について次のような内容紹介をしていた。
うれしい日も、つらい日も、この声援と生きていく―。
本屋大賞受賞作家、40年の想いの結晶。
大洋ホエールズからDeNAベイスターズへ。
時を超えてつながる横浜ファンの熱い人生が胸を打つ感動作。
さえない高校教師。未来を探して揺らぐ十代のカップル。奇妙な同居生活を送る正反対の性格の青年たち。コックの父と少年野球に燃える息子。彼らをつなぐのは、ベイスターズを愛する熱烈な思いだった! 本屋大賞受賞作家が、横浜ファンたちの様々な人生を描き、何かに夢中になる全ての人に贈る感動の小説集。
…ということだったが、そんな内容まで知らずに本書を読み始めた私だった。
本書は、
「レフトスタンド」「パレード」「ストラックアウト」「ダブルヘッダー」
の4つの話で構成されていた。
これが、過去から時代を追って現代に近づいてくる。
しかも、大洋ホエールズ時代から、横浜ベイスターズ、DeNA横浜ベイスターズという変遷だ。
でも、それぞれの話に出てくる中心的な登場人物は、皆その当時の横浜ファンなのだ。
「レフトスタンド」の話は、1984年当時の弱小チーム。
出てくるのは、さえない高校の先生と、さえない囲碁同好会の高校生。
「パレード」は、1998年の優勝の頃。
主人公は、高校生時代から社会人1年生の女性とその相手。
「ストラックアウト」は、2010年の頃の再び弱かった頃。
主人公は、小規模電気店に勤める若者男性。
「ダブルヘッダー」は、2016~17年のころで、17年に初めて下剋上を果たして日本シリーズに出たときのベイスターズが出てくる。
ここの主人公は、小学4~5年生の野球少年。
それぞれに、熱狂的な横浜ファンなのだが、彼らの人生とその当時のチームの戦いぶりが交錯する。
それぞれの人物に起こるできごとや事件とベイスターズの試合が並行して描かれることが迫真性を増す。
その当時の印象的な試合のシーンももちろん多い。
その頃活躍した選手の名前が出てくると、とても懐かしい。
遠藤、川村、戸叶、石井琢朗、鈴木尚典、佐々木、三浦(現監督)、木塚、山﨑、今永、濱口、筒香…、それぞれの時代で輝いた選手たちの名前が続々出てくる。
阪神タイガースファンの私だが、とても楽しく読めた。
本書が出版されたのは、2020年10月。
だから、もちろん昨年のベイスターズの日本一は扱われていない。
でも、本書のような過去があったからこそ、熱心なファンは、去年の優勝がより一層うれしかったはず。
「いつの空にも星が出ていた」の星とは、ベイスターズから来ていたのだと、途中でやっと気づいたよ。
ベイスターズファンなら、必読の一冊だな、この本。