前にも書いたけど、野草の花見が好きな私にとって、この9月までのNHKの朝ドラ「らんまん」は楽しかった。
ただ、このドラマは、正確に事実をたどったわけではなく、あくまで牧野富太郎を「モデルにしたドラマ」ということだった。
登場人物も、主役の名前は「槙野万太郎」だったし、できごとも、いかにもドラマという感じもした。
もう少し、事実を知りたいし、牧野富太郎が書いた植物の絵や実際の植物もじっくり見たい知りたいとも思っていた。
その思いに応えるような一冊がこの本だった。
現職の写真のページが多いから、出ている植物は図鑑のように楽しめた。
牧野富太郎がその生涯で心惹かれた植物や彼が命名した植物を、写真入りで、それにまつわるエピソードとともに、順に紹介されていた。
「らんまん」の中で出てきて、重要な役割を果たして(?)いた植物が、当然ながら多く紹介されていた。
少年時代の「バイカオウレン」、若いときの「ヤマトグサ」、大発見の「ムジナモ」、牧野を生涯支えた妻の名を付けた「スエコザサ」など…。
それらを読みながら、改めてドラマ「らんまん」のストーリーを思い出す楽しさがあった。
また、ドラマと事実とのずれが分かったりするのも楽しかった。
例えば、牧野の実家が「峰屋」ではなく、「岸屋」だったとか。
写真やエピソードだけでなく、牧野が書いた植物画が添えられてあることも多かった。
たしかに、彼の描いた植物画は、どれも精密に描かれていた。
それらを見ていると、牧野が植物が好きだから、その存在をありのままにすべて描き尽くしたいという気持ちで描いていたということが伝わってきた。
また、ドラマでも万太郎の性格がかなりいい加減に描かれていたが、牧野はそれを上回るくらいハチャメチャだったから、借金もふくらんだことがよくわかった。
それにしても、渋谷で妻の寿衛が働いて金を稼いだり、大泉の広い土地を購入したりしたことは本当の話であったことも、正直驚きであった。
そして、ときどき「スミレ談義」や「ラン談義」などのコラムのようなページもあり、植物についてのうん蓄も楽しめるようになっていた。
牧野がその生涯で心ひかれた植物や彼が命名した植物の写真が、まつわるエピソードとともに多数掲載されていて、面白く読めた。
とても満足した一冊だった。