ON  MY  WAY

60代を迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされ生きる日々を綴ります(コメント表示承認制です)

「冷たい恋と雪の密室」(綾瀬隼著;ポプラ社)を読む 

2025-01-04 17:11:17 | 読む

1月といえば、雪の季節。

近年の降雪量・積雪量はかつてほどではなくなったとはいうが、いざ降るとなると「やめてくれ!」と叫びたくなるほど降るときがある。

今、北海道や青森などはそんな状況かもしれない。

新潟県内でも、上・中越地方の山沿いではかなりの大雪になっていて、「雪よ降るな」と言いたい地域もあるだろうと思う。

幸い私の住む地域では、平野部ということもあってさほどでもなく、今朝でも5cmくらいの積雪であり、その後積もっていないので助かっている。

 

だが、平野部であっても、いざ降り出すとひどい雪になることもある。

2018年の1月には、JR信越線の列車が大雪のために三条市内で立往生となって、乗客約430人がおよそひと晩、列車内に閉じ込められるという出来事があった。

15時間半という長時間に及んだから、これに対しては、当時の菅官房長官が不快感を表明したりもした。

大手の新聞社など、メディアもJRや新潟県知事のバッシングに走ったりしたという記憶がある。

なぜ途中で乗客を降ろせないか、なぜ救助に行けないかということが、雪国でない人たちには到底わかってもらえないゆえのバッシングであったことだろう。

 

前置きが長くなった。

本書「冷たい雪と雪の密室」については、昨年末の新潟日報の書籍の紹介ページに出ていた。

上記の立往生の列車を舞台にした作品だったので、興味を持った。

当市内の本屋に行くと、店頭に並んでいたのを見たことがある。

昨秋に出た、高校生が主役の恋愛を描いた本だった。

60代後半のオッサンが買うにはちょっとひけるので、図書館で検索してみたらあったので、幸い借りることができた。

 

発行元のポプラ社は、本の内容について、次のように紹介している。

 

2018年1月11日。

新潟県三条市で、JR信越線が大雪で立ち往生するという事件が発生。

高校生男女たちも電車に閉じこめられ、

15時間”密室”となった車内で、熱い恋が動き出す……!

実際に起きた事件を基に、ラストの思いがけないどんでん返しまで鮮やかに描き切る、綾崎隼、待望の恋愛ミステリ。

 

センター試験2日前、歴史に残る最強寒波が新潟県全域を襲った。

放課後、受験勉強を終えた三条市の高校三年生、石神博人は大雪の中、最寄りの三条駅に着いたが大混雑で電車は全然来ない。自宅のある帯織駅までは2駅とはいえ約7キロあり、この天候で歩いて帰るのは難しい。

18時過ぎ、やっと来た電車に乗り込むと、大混雑の車内で偶然地元の友人、櫻井静時と遭遇する。久々の再会を喜んでいるとき、そのスマホに博人が想いを寄せる幼馴染み、三宅千春からメッセージが届いたのを見てしまう。しかも静時は気づいたはずなのにメッセージを開かず、通知は300を超えていた。密かに動揺する博人だったが、同じ電車に千春も乗っていて……?

はからずも雪の密室に囚われた夜、高校生たちは誰かを強く想った。逃げ出すことさえ許されない電車内で、祈るように未来を思った。

――これはそんな夜に起きた、たった一晩の、まだ愛には至らない恋の物語。

 

…このように紹介されていた。

紹介ではあまり聞きなれない「恋愛ミステリ」とも書いてあった。

 

さっそく読んでいく。

本書は、実際に起こったその列車立往生トラブルをもとにして、その密室の列車内で高校生たちの友情がからんだ恋愛が動いていくという物語。

雪に閉ざされ停車して動けなくなった列車の中という、逃げられない状況の中で、もう一つ恋愛を巡って逃げられない人間関係のストーリーが展開していく。

なるほど、「恋愛ミステリ」だわ、これは。

登場人物たちの、列車内に閉じ込められ、動けない追い込まれた状況と、せっぱ詰まった恋愛の状況が、話に緊迫感を生んでいた。

愛に対する執着心が、さらに重苦しさを増していった。

最終的にどう決着するのだろう、という好奇心で一気に読んでしまった。

読み終わったときには、まるで閉じ込められた列車から解放されたように、重苦しさから解放されたように感じた。

 

設定が実際にあった出来事であり、そこで時間の進展とともに起こったことをよくとり混ぜてストーリーを展開していた。

作者は1981年新潟県生まれと書いてあるが、あとがきの一部にこう書いている。

私は、真冬に生まれ、雪国で育っています。

試験前日の朝まで雪に囚われた高校生たちが経験する恋模様。

自分が書くべき物語な気がしました。

 

着想が新鮮だった。

事実をもとにした恋愛ミステリ。

最後まで結末が予想できずに読んでいったよ。

登場人物たちの純粋な思いに、若さと怖さを感じながら。

 

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