ON  MY  WAY

60代を迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされ生きる日々を綴ります(コメント表示承認制です)

「滅びの前のシャングリラ」(凪良ゆう著;中央公論新社)を読む

2024-12-13 18:09:48 | 読む

「シャングリラ」という言葉やその意味を初めて知ったのは、私が社会人になった年。

1985年に出された吉田拓郎のアルバム名「Shangri-La」からだった。

「理想郷」という意味だったが、購入したそのアルバムには「あの娘といい気分」とか「いつか夜の雨が」とかの曲があった。

だけど、「シャングリラ」の意味するものが伝わってこないなあ、と思ったのを覚えている。

 

このたびは、その「シャングリラ」の言葉を含む本を、図書館から借りて読んでみた。

凪良ゆうの「滅びの前のシャングリラ」だ。

2020年の本屋大賞を「流浪の月」で獲得した翌年に発行され、この作品は、2021年本屋大賞第7位となっている。

 

今回この凪良ゆう氏の作品を借りてみようと思ったのは、図書館で本棚を見たら、その名札の本棚に、彼の作品が置いてなかったからだ。

凪良ゆう氏の本は、図書館に9冊おいてあるはずなのに、棚が空っぽ。

つまり、その著書は、すべて借りられていたということ。

そんなにたくさんの人が氏の本を求めているのか、と思い、機会があれば読んでみたいな、と思った。

そして、なにげなく返却本のコーナーの前を通ったら、この「滅びの前のシャングリラ」を見つけたので、借りて読んでみようと思ったのだった。

 

中央公論社の本書の紹介では、次のような紹介があった。

「一ヶ月後、小惑星が地球に衝突する」

突然宣言された「人類滅亡」。

学校でいじめを受ける友樹(ゆうき)、人を殺したヤクザの信士(しんじ)、

恋人から逃げ出した静香(しずか)、そして――

荒廃していく世界の中で、「人生をうまく生きられなかった」四人は、最期の時までをどう過ごすのか。

滅びゆく運命の中で、凪良ゆうが「幸せ」を問う。

『流浪の月』『汝、星のごとく』で

二度の本屋大賞を受賞した著者による 心震わす感動作

 

読み始めてみると、本書は4つの章に分かれていた。

初めは4つの短編かと思ったが、違っていた。

1か月後、小惑星が地球に衝突する、という滅びのパニックの状況下で、章ごとに中心人物を変えて、ストーリーが進んで行った。

3章目までの3人には、家族というつながりが見つかって話が進んだ。

だが、最後の4章目の山田路子だけはちょっと違っていたが、やはり家族や友人とのつながりが描かれていた。

 

この作品は、前半を中心に、ちょっと暴力シーンが多かったのだが、置かれている状況を描くためには仕方がないのかな。

ひと月後に小惑星が地球にぶつかって世界が終わる、そう分かって、人々がパニックになる絶望的な状況下で、殺人や暴力が横行する。

そんな中で、高校でいじめられている人物が、好きな子のために身を投げ出しても守ろうとする。

母は、生まれ来る子どものために、暴力を振るう相手から逃げ、何をしても子どもを守ろうと育ててきた。

殺人を犯してしまった人物が、家族とのつながりに心が許せることを見出したり、愛おしさを抱いたりして、荒れて油断のできない日々を、家族を守ろうとする。

「自分は独りではない」と分かることが、どれだけ人間にとって心の支えになることか。

ストーリー全体に流れているのが、「愛」。

それに包まれていることが、登場人物たちにとって「シャングリラ」となっているのだろうなあ。

地球が滅ぶという、どうしようもない直前のことではあるけれども…。

それでも、この作品からは、「シャングリラ」の意味が伝わってきた。

 

凪良ゆうの小説、他の作品はどんななのだろう?

2020年に本屋大賞を取った「流浪の月」にも関心がわいてきた。

機会があれば、読んでみたいな。

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