四季の歌と暮らす

 年齢ごとに「一度っきり」の四季と、
旬(しゅん)のヨコハマを味わう「くりごとの集」です。

歌会始は14日です

2010-01-12 20:40:41 | 歌の花束
 皇室伝統の歌会始は明後日14日で、歌に織り込む題は「光」です。今年は歴代最長老で94才の元海軍軍人が、地球上から応募の24000首から選ばれておられます。 去年2009年のお題は「火」で、感銘の歌を5首選びましたので鑑賞してください。本来の縦書きが出来ず印象が変わりますがご辛抱してお付き合いください。
 天皇皇后両陛下の前で朗々とわが歌を披露されて感激されたことでしょうね。大変な名誉ですもの。

☆一人見る花火はさびしいものだよと
            赴任の地から父は電話す  佐賀 田中雅邦
☆夜神楽の火は赤あかと燃え盛り
            大蛇の顔の迫り来るなり  島根 吉田友香
☆機内より見ゆるあかりは漁火か
            恋ひし日本にああ帰り来ぬ ハワイ ヤエコ・パワーズ
☆田づくりも今宵かぎりと焼く藁の
            赤き火見つむ妻と並びて  青森 中村正行
☆キャンドルに灯る火をみて涙ぐむ
            一人で開く誕生日会    大阪 上田奈緒
 
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啄木の歌碑だ

2009-09-08 07:59:31 | 歌の花束
 雑踏の上野駅前商店街にひっそりと石碑があり、好奇心から近づいてみますと石川啄木の歌碑でした。私は南国の生まれのせいか、この東北の歌人には縁が薄く教科書に載る明治の悲惨な貧乏歌人程度しか知りません。今調べてみますと、なんと26歳の死だったのです。平和な社会に誕生されたらと悔やまれます。生まれが早すぎたんですね。
 『ふるさとの訛なつかし 停車場の人ごみの中に そを聽きにゆく』
と刻まれていました。慣れない雑踏の大都会に疲れて癒しのお国訛りを聞きにこられたんですね。上野駅の15番ホームにも同じ歌が碑に彫られてあるそうです。
 かって家族で盛岡に遊んだとき、盛岡城址(こずかた城)の歌碑は啄木の青春の夢多き明るさが発散していました。
『不来方のお城の草に寝ころびて空に吸われし十五の心』


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好きな短歌

2009-06-09 06:53:42 | 歌の花束
 NHKのBSで「列島縦断短歌スペシャル」を去年放映、選ばれた作品が公開されています。私の好みの作品を鑑賞してください。

♪すべり台登って下りてまたのぼるママを待つ子のかなしき夕べ  高知 吉本桂生
   共働きしないと暮せない不況、若い夫婦が心豊かな子育てが出来る政治が欲しい。   人口減少が懸念されながら、打つすべを知らない衆愚政治を悲しむ。
   待つ幼子が想像されて切ない。

♪激情はふいに漲るものならものならむ<のぞみ>に乗りて渡る朝川  東京 白石瑞紀
   万葉集の「ひとごとを繁みこちたみおのが世にいまだ渡らぬ朝川渡る」の激しいお   姫様の思い切った恋に重ねた歌で素晴らしい。遠距離恋愛を私も乗り越えました。
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母の日の頃

2009-05-09 08:01:16 | 歌の花束
 「母の日に贈りてくれし香水の
           匂ひまとひぬ子の命日を」  都城市 田中美智子

売場には母の日プレゼントがリボンを結んで目をひく今日この頃です。香水を母の日に届けてくれた子が、先に逝くなんてどんな悲痛な苦しい逆縁だったでしょうか。
その命日には、香水の香りを身につけて子供さんとの一帯感を味わう心境になられたんですね。「愛別離苦」は避けられない四苦八苦のひとつですが、せめて歳の順であって欲しい。でも周りを見回すと結構多くの方がこの苦しみに泣き叫んだことがわかります。

 「あれはみな悪夢だったと言うように
               野の草叢に眠る忠魂碑」 秋田市 渡辺悦子

5月3日は「憲法記念日」でした。平和憲法第九条を修正しようとかっての悲惨な苦痛を忘れているエセ愛国者が動き出しています。憲法は暴走しやすい国家権力から国民を守るただ一つの防波堤です。たとえ米国に押し付けられたとしても、よいものは良いのである。子や孫を戦場に追いやる自民・公明の改憲に強く反対します。
 とちの花が咲いていました。
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港が見える丘

2009-04-28 06:29:14 | 歌の花束
 横浜見どころのひとつに「港が見える丘」があります。そこにさりげなく歌碑があり、この丘の命名のもとになった、東 辰三(あづま たつぞう)の歌が刻まれていました。
昭和22年にレコードが発売され大ヒットとなりました。氏は明治33年神戸生れで、「君待てども」も有名な作品です。50才の若さでで亡くなられました。
 メロディも歌詞もすてきな曲で、今から62年前とは思えません。失恋のさびしさが抑制された慎みある詩となって、春の午後のけだるい風情に合います。
その歌詞をどうぞ口ずさんでください。四月の句会でみんなと歌いました。

♪あなたと二人で 来た丘は  港が見える丘
  色あせた桜 唯一つ 淋しく 咲いていた
   船の汽笛 咽び泣けば チラリホラリと 花片
    あなたと私に 降りかかる  春の午後でした

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恋に生きた歌人ー柳原白蓮

2009-03-20 09:39:28 | 歌の花束
 「和田津海のおきに火もゆる火の国に
           われあり誰そや思はれ人は」
 「我命惜しまる々程の幸を
           初めて知らむ相許すとき」
大正天皇のいとこで、美しい歌人「柳原白蓮展」を見に行きました。明治18年生まれ、大正、昭和の三代を生き、昭和42年81歳の生涯でした。
宮崎龍介28才と恋に落ち、華族の名誉と大富豪の妻を捨てたは彼女は36才でした。
 「もっともっといぢめて泣かせて  上げませうか  子
 龍様」
という、宮崎龍介あての恋文多数も展示されていました。早大の愛息が終戦間際に鹿児島の串木野で戦死されて、反戦運動に入られたそうだ。
 飯塚商工会議所のホームペイジに詳報があります。
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♪浜千鳥

2009-03-04 07:41:06 | 歌の花束
 泣き出しそうな寒い曇天でしたが、古民家が遺されている「横溝屋敷」へ雛飾りを見に行きました。靴を脱いで昔の冬の寒さを足に体感しつつ、飾られている古雛を鑑賞しました。
 小学生たちが尺八とお琴の演奏に聞き入っています。私の大好きな鹿島鳴秋の「浜千鳥」です。まさに、にっぽんの名歌、シンミリします。たしか、新潟の浜辺で作詞されたと記憶します。「波の国から生まれ出る」とはロマンチックな素敵な表現ですね。

 ♪青い月夜の浜辺には 親を探して鳴く鳥が
       波の国から生まれ出る 濡れた翼の銀の色
  
  夜鳴く鳥の悲しさは 親をたずねて海こえて
       月夜の国へ消えてゆく 銀のつばさの浜千鳥
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家族のきずなを

2009-02-25 05:51:36 | 歌の花束
 春浅い空に、伸びやかな松の木の枝振りが美しい。この頃日本らしい景色だった松の木が少なくなったのは残念です。朝日歌壇から大事な「家族の情愛」の歌をどうぞ。こんな厳しい大不況の時代だからこそ先ず夫婦間で、家族のきずなをしっかり結び合いましょう。

新しき手帳の年齢早見表亡き子の年に朱線を入れる  秋山 満
   私は両親や兄の逝った年にマークをいれております。
夜に来て明日帰る子が月光を青くくずして雪下ろしいる 清野 弘也
   父と息子の寡黙なれども熱い情に感動。厚い雪も融かす愛です。
遺言は触れずじまいに雑煮炊き三泊四日の子らをもてなす 三浦礼子
   まじかに死も覚悟している母親の愛に、わが母を重ねます。
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学生百人一首(その2)

2009-02-14 06:10:48 | 歌の花束
 MOA美術館ロビーに飾ってあった小学6年生の堂堂たる書に打たれました。

◎脈拍が消えていくのを手で感じ涙こらえて歯をくいしばる 
                    新宿区医師会立看護高2年 滝澤江里
 (ナースは医療現場の最後の愛のきずな、強くやさしくあれ)
◎溶接の火のこびとらが踊りだす実習室は炎の舞台  長崎工業高3年 山口洋平
 (火花を小人にたとえた比喩がロマンチック、その君のセンスが素敵)
◎限界は僕が思うほど近くないぶつかるまでは走ってみようか  
                    西部学園文理高1年 村崎愛奈
 (私は自分の跳べるハードルを低くして、挑戦をしてこなかった悔いがあります)
◎梅干しやぬか漬けなめものあんこまでもう食べられないじいちゃんの味
                    神奈川大付属高2年 吉野拓哉
 (爺ちゃんへの哀悼の歌、これからも思い出してね)
◎試合前体の震え抑えつつ相手選手と握手を交す  清風中2年 福原健太
 (勝負直前の緊張感がビーンと伝わります。中学生とは思われない歌だ)
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学生百人一首(その1)

2009-02-13 06:07:12 | 歌の花束
 熱海はもう桜が満開で、メジロが目白押しに蜜を吸って春爛漫でした。
さて、東洋大学主催の「現代学生百人一首」から、私好みの歌を採り上げてみました。

◎染みついた鉄のにおいがする髪をとかして思うもはや職人  むつ工業高3年荒谷夏希
  (手に職をつけんと学び、髪の毛のにおいに職人魂を感じて頼もしいなぁ)
◎一歩ずつ大人になっていくたびに母の涙に気付いてしまう  坂戸西高1年石井春菜
  (母を気遣うこまやかな情が芽生えていい歌です)
◎入試前夜食と共に「がんばってね」湯気でふやけた付箋紙一枚  田柄高3年安永亜沙
  (ふやけた小さな付箋に母親の情が滲んでジーンと感動させます)
◎悔し泣き肩を叩いた親友がそっとつぶやく一人で背負うな かえつ有明高2年本澤権人
  (親友は一生の宝物だ。悲しみ苦痛は分かち合えるものです)
◎君の名の漢字を辞書で引いてみる心のしおりそうっとはさむ  伊那西高2年宮下唯
  (初恋のすがすがしさが・・・。コッソリ引く辞書、わかるなぁ)
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春立ちぬ

2009-02-06 18:49:39 | 歌の花束
 『春は、曙。やうやう白くなりゆく山際すこし明かりて、紫立ちたる雲の細くたなびきたる』 清少納言の枕草子第一段の名文です。

 『石(いわ)走る垂水(たるみ)の上のさわらびの萌え出づる春になるにけるかも』 万葉集 巻第八の志貴皇子(しきのみこ)の有名な和歌。

暦の上では春となりましたが、寒さは続きます。例年センター試験当日に雪が降ることがありますし、インフルエンザが威を振るっています。雇用情勢も直角に悪化、政治は停滞してまだまだトンネルの中です。しかし、朝の来ない闇夜はありませんから、気力だけはたくましく持ち我慢いたしましょう。幼子達は元気に春の草を走っていました。
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歌会始の作品

2009-01-28 14:55:07 | 歌の花束
 正月、皇居で開催される歌会始のお題は「生」でした。両陛下の御前で自分の作品を朗々と披露されるのは一族の名誉でしょうね。選ばれた作品の中から、私の好きな歌をご紹介します。
○大空に春の余白を生みながら雲のひとつとなる飛行船   菅野 耕平
   @最後に無機質の飛行船が出てきて、抒情の前半から肩透かしの面白さが。

○熱線の人がたの影くつきりと生きてる僕の影だけ動く   北川 光
   @広島の原爆の生々しい傷痕に佇み、生きている自分を確認している。

○百年を町屋大工に生きて来し爺さま親父そしてわたくし  五十嵐 弘治
   @いのちの元へ感謝の思いがにじみます。

○還り来し父ありてこそわが生まれしと思ふ今日の日終戦の日は  藤倉 美知子 
   @復員のお父さんなくんば、彼女の今はないのです。

○田に水のつぎつぎ張られ見はるかす讃岐平野に空生まれたり   薮内 眞由美
   @日本伝統のみずみずしい初夏の景を、大きく詠いました。 
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皇后さまの歌(2)

2008-12-30 08:45:37 | 歌の花束
◎ご家族を詠う
 「彼岸花咲ける間(あわひ)の道をゆく
                行き極まれば母に会ふらし」  
 ・はじめて民間から皇室に嫁ぎ、私たちの様に自由に行き来できなかったお母さんを思うと悲しいですね。

 「母吾(われ)を遠くに呼びて走り来し
             汝(な)を抱きたるかの日恋しき」  娘・紀宮の思い出

 「初(うひ)にして身ごもるごとき面輪(おもわ)にて
                  胎動をいふ月の窓辺に」  秋篠宮妃を気づかう

◎私が最も感動した一首
  「知らずしてわれも撃ちしや春闌(た)くる
                 バーミヤンの野にみ仏在(ま)さず」
 ・アフガニスタンのタリバンが偶像崇拝だと爆破した大仏を思い出されたのでしょうか。「自分もタリバン同様に、仏を撃ったのでは」という自責の念に、篤き信仰者の謙虚なお姿を伏し拝みたいものです。
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美智子皇后さまの歌(その1)

2008-12-28 12:12:55 | 歌の花束
 心の枯れた国民の癒しである皇后陛下は、現代の有数な歌人でもあります。慌しい年の瀬、私が感動させられました短歌をご鑑賞ください。
◎慰霊・反戦の歌
 「いまはとて島果ての崖(がけ)踏みけりし
       をみなの足裏(あうら)思へばかなし」  サイパン島
 「慰霊地は今安らかに水をたたふ
       如何(いか)ばかり君ら水を欲(ほ)りけむ」  硫黄島
 「初夏の光の中に苗木植うる
       この子どもらに戦(いくさ)あらすな」

◎皇太子ご夫妻への歌
 「たづさへて登りゆきませ山はいま
       木々青葉してさやけくあらむ」    ご成婚
 「いとしくも母となる身の籠(こも)れるを
       初凩(はつこがらし)のゆふべは思ふ」  愛子さまご懐妊
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暮らしの歌

2008-11-18 05:52:35 | 歌の花束
 朝日歌壇から感銘した歌をどうぞ。
「ゴハンヨ」と幼き曾孫は呼びに来てスリッパを逆に揃えてくれぬ 
山本富士子さん 
 しつけの出来たご家庭の温みが伝わります。玄関の靴を揃える、使った椅子は戻す、名前を呼んで夫婦で朝の挨拶をするを立正佼成会では指導しています。
休日のみ顔合わす子よ日曜の夜の「おやすみ」は「さよなら」に似る
長尾幹也氏  
 親も子も忙しすぎてすれ違う、せめて休日は語りあいたいですね。
見えぬ眼でじっと見つめる老い母に私の涙見えぬ幸い
後藤順子さん 
 私も涙がにじみます。みんな行かねばならぬ道ですが辛いですね。
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