『子どもが大きくなって親に逆らったり偉そうな口をきくようになっても、お母さんには、幼いときの母親だけが頼りで親の言うことはなんでも素直に聞いてくれた、けがれのない子どもの記憶が残っています。わが子に対するこの母親のぜったいの信頼が、なによりも大事なのです。
かりに、わが子が周囲から非難されるようなことをしても、母親は「この子は本当は優しい心を持った子なのだ。たまたまなにかの拍子で間違いを起こしただけだ」と、わが子を信じています。たった一人だけでも、この世に自分を信じてくれる人がいてくれることが、子どものなによりもの支えになるのですね。いつも自分を見守ってくれている人がいると思うと、踏ん張って、立ち直れるのです。仏さまのお慈悲の見守りも、この母親の愛情と同じです。
「いま、どんなに汚れをまとっていようとも、その汚れをぬぐえば、あなたの仏性が輝き出るのですよ」と、仏さまは私たちを信じきって、呼びかけてくださっています。仏さまは、どんな人であっても、いま、どんなことをしていようと、最後までお見捨てになるようなことはないのです。』
庭野日敬著『開祖随感』より