『人生には、さまざまな困難があります。その困難に押しつぶされる人もいれば、それをバネに飛躍する人もいます。その違いは、「くじけるものか」と気力を奮い立たせるか、「もうだめだ」と投げだしてしまうか、その違いだと思うのです。
どんなことにも、よい面と悪い面が表裏になっています。それを、よいことと悪いことの二つに分けて、これは自分にとってプラスになる、いやマイナスだ、と決めつけてしまうのは、そのときの目先のことしか見ていないからです。
それを、もう一度裏返してみる。反対側からも見る習慣をつけるのが、仏教の智慧、人生の極意といえましょう。
松下幸之助さんは、貧乏だったこと、学歴のないこと、病身だったことを成功のバネにされた方でした。そのどれをとっても、ふつうなら大きなマイナス要素です。「自分くらい恵まれない人間はいない」と意気消沈しかねないところですが、松下さんは、それを活力に変えられたのです。
若さには、つまずきがつきものです。受験の失敗や失恋も、その裏に得難い人生の宝が隠されていることを忘れないでほしいのです。』
庭野日敬著『開祖随感』より