『子どものころの私にとって、父は最高のお手本でした。いつも体の弱い母親を気遣い、難しい仕事は自分が全部引き受けて、それぞれの子どもの分に応じた仕事を、手をとって教え、覚えさせていくのです。父にそうして厳しく仕込まれたお陰で、私は、のちに上京して奉公するようになっても、奉公先の仕事がまことに楽なものでした。
理想の父親像についていろいろに言われていますが、最近、父親の影響力が弱くなっている原因は、父親が自信を失ってしまっていることにあるのではないでしょうか。
この社会は、秩序というもの、ルールというものがなくては成り立ちません。そのことを教える父性は、いつの時代にも欠かせない大切なものです。それによって公私の区別、善悪の区別を子どもたちが身につけていくわけです。
権威を振り回す父親ではなく、子どもが心から尊敬できる父親であることが、なによりも大切だと思うのです。
一家に心棒があることで、子どもは社会で生きていくルールと責任感を身につけていきます。
父親の影が薄れてしまうと、この社会全体が心棒のないものになってしまいます。』
庭野日敬著『開祖随感』より