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風鈴祭りに今まで来たのはもっと遅い時期だったので、この花を見ることはなかった。
木肌は、百日紅のようにつるりとしている。
緑の葉の中に白く咲く花は、すぐ目を惹いた。
夏椿だとすぐに気がつき嬉しくて暫くは、そこを動けなかった。
もうずっと以前までは、夏椿と沙羅双樹と同じものだと思い込んでいたときがあった。
夏椿を沙羅の木と別名で呼ばれているせいだったのかも知れない。
ところが、草津みずの森水生植物園の温室で沙羅双樹の開花しているのと出会って、沙羅の木と、沙羅双樹とはまったく別の木であるのを目で確かめた感動が今もまざまざと思い出す。
夏椿をじっと見詰め、カメラを向けていた私の傍を、ご住職が庫裏から本堂に行かれるらしく通りかかられた。
「この花は、一日花で明日にはもう落ちてしまうのですよ。」
そう教えてくださった。
杉苔の上にまるで少女が白いスカートを広げて座っているような、花一輪を見つけて、一番美しい姿のときに落ちる花の儚さを、しっかりとカメラに収めた。