迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

寒感閑歡。

2021-11-28 18:19:00 | 浮世見聞記
東京では日中に冷たい風が強く吹き、街路の樹々は寒さに枝を震はし葉を散らす。白く照った道をいく人々は肩を尖らせ、まだひと月あるはずの年の瀬が、まう来たのかと心を惑はす。窓の内にひとり坐し、かうしてゐることがいまは利口と知る。そのうちにあの風が、なにか嬉しい噺を聞かせてくれるだらう。 . . . 本文を読む
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夜は春に明けず。

2021-11-28 10:23:00 | 浮世見聞記
ラジオ放送で、觀世流の「屋島」を聴く。讃岐國屋島を舞台に、武運絶頂期にあった頃の源義経を燦爛勇躍に描ひた戰勝曲なれど、修羅の瞋恚もちゃんと語られてゐる點に皮肉な面白さがある。私も過去に仕舞でつとめたことがあるが、ひねくれたところの無いぶん直球かつ豪快に……、舞へるやうになったら一人前だらう。原典の「平家物語」を讀むと、義経軍にはこの合戰中にも後の火種を思はせる暗闘が顔を覗かせてゐて、いくさとはただ . . . 本文を読む
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