迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

真如の月ぞ。

2020-11-30 19:54:00 | 浮世見聞記
驛前でのちょっとした用事に、思ひがけず精氣を吸ひ取られるやうな疲勞を覺えて、これはアカン、と一度帰城し呼吸を整へる。



散歩は厄拂ひと縁起を担ひで、先程とは真逆の方向を行く。



夕方にならんとする空に霞のやうな雲がかかるを見、



よく通ってゐるはずの道の端に、コムラサキの實が成ってゐることに初めて気が付くなど、やうやく普段の調子を取り戻し、この方向を散歩道に選んで正しかったと安堵する。


復路の途中で寄ったショッピングモールでは、はやクリスマスソングのBGM、まうそんな季節にならんとするか、と驚かさるる。



今年は先の為政者が“お手上げ宣言”を發出してからが、本當に早いとしみじみ思ふ。

この調子だと、来年のカレンダーと手帳を、うっかり買ひ損ねるやもしれぬ。



興味ある映画DVDを思ひがけず廉価で手に入れて、氣分よく歩く道の向かうには、まどかなる月。



「月澄みわたりて明明たる……」

謠曲「生田」の、好きな節の箇所が口をつひて出る。


やがては暁の空を拝めるだらう。

時世を自分の目で、

よく見さへすれば。






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