迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

ちゃうじゅの眼差し。

2018-07-11 12:08:22 | 浮世見聞記
神奈川県川崎市中原区小杉町──

江戸時代の初期には徳川将軍の仮御殿が設けられ、また東海道の平塚宿から江戸までの最短脇往還として重宝された中原街道の宿駅がおかれ、現在は工場跡地とその付近に乱立された超高層マンションなどによって、最寄りの武蔵小杉駅が悪質な混雑に陥ってゐるこの町の一角に、昔を偲ばせる一本の木ありけり。


道路端からはみ出してゐるやうに見へるが、伐採することなく道幅を広げたため、結果としてかうなったものであらうか。


かつては川崎工業地帯の労働者が多く住んでゐたと云ふ時代を私は知らないが、この道に一本だけ残ってゐるこの木を見ると、ありふれた町並みとなる以前の姿が、ぼんやりと眼前に浮かんでくるやうな……。





時間(とき)は移り、

人はとどまることなく、

しかし草木はそこに佇んで、

時代を静かに見つめる。


草木は無情にあらず。


魂が語りかけやうとするのを、

人はおのれの人生のせいにして、

聞かふとしないだけだ。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 現代の名奉行。 | トップ | 御魂をしのぶ。 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。