愛聴してゐるラジオ番組「ひるのいこい」で、書店で知人に會ふと、自分が手にしてゐる、または手にしやうとしてゐる本からこちらの思考を知られさうで、いやだと思ふ──とのお便りが紹介されてゐた。
他人に“個人情報(プライベート)”を覗かれるような抵抗感がある、と云ったことでもあらうか。
なるほどなァ、と思ふ。
その分野の本の賣場に立ってゐる人は、いかにもその本に相應しい雰囲気の人であることが多い。
鐵道関係の本のところにゐる人を見ると、自分も他人にはあんなふうに映ってゐのか、と思ふことがある。
書店は、ふだんの外見からでは判りにくいその人の内面が、案外赤裸々に表れる所かもしれない。
……さうして、ある綺麗なお姉サンが、意外や松本清張を讀んでゐることを知った、今は昔の甘酸っぱ過ぎる経験を、思ひ出したくもないのに思ひ出す。