迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

三番叟と茸の贅沢な夕べ。

2018-09-23 22:32:04 | 浮世見聞記
東京都豊島区の南池袋公園に特設された能舞台で、18:30より「日本の芸能 三番叟 中世から江戸へ」公演を観る。


壱千圓と弐千圓といふ、良心的な入場料とあってか会場は大入り、若年層や親子連れの姿も多く、開演前に小さな息子へ、

「能舞台はめったに見られないのだから、よく観て憶えておくのよ」

と、囁いてゐる母親もいたりして、頼もしいやうな気持ちになる。





番組は、初めが野村万蔵の「三番叟」。

上演に先立ち、併設の大型ビジョンをつかった本人による解説のはうに、むしろ見るべきもの、聞くべきものがあった。


お次が猿若流家元の舞踊「操り三番叟」なるが、この御流儀は糸操りではなくて、人形振りで踊るやり方らしい。

まぁそんなところだと、久しぶりに聴く長唄の生演奏のはうに、楽しみを見出す。


最後が、狂言「茸(くさびら)」。

私の好きな狂言の一つだが、山伏役に扮した野村萬が登場した途端、舞台はいっぺんに濃密な狂言空間に刷き変わり、自分はいま本物の傳統藝能に接してゐるのだといふ幸せを、強く実感する。

たくさんの茸役で出演した豊島区民の人々もよく揃ってゐて、藝事は血筋よりも御家柄よりも、『素質』が第一だといふことを、よく示してくれてゐた。



終演は20:04。

休憩無し約90分の番組で、このお手頃さが、今宵の私には一番の収穫となった。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« おどりのいろどり。 | トップ | 救ひは閃き。 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。