迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

ピリ辛印な陽気。

2018-07-14 23:43:49 | 浮世見聞記
朝、起床して窓を開けた瞬間、

「こらアカン……」

と、窓を閉める。

朝にしてこの熱気、とても普通ではない。

窓からの日射しをカーテンで遮断し、冷房を目いっぱいに稼働させて、今日は読書に充てることにする。


読む速度より、新古書店や古書街で気になった本を買ひ求める速度のはうが速いため、今では買ひ控へなくてはならないほど、押し入れには未読本が溜まってしまってゐる。

「あの本が早く欲しいから、はやくこの本を読んでしまわう……」

すっかりそんな調子である。


それにしても、新刊本の書店には、すっかり足が向かなくなってしまった。

月末に発売される鉄道専門誌へ目を通しに──“読む”ではない──、ちょっと行く程度だ。

理由は、

現在の新刊本に、

読みたいと思ふしろものが、

無いからだ。

「今とりあへず売れればいい」といった意図が見え見えの、いかにも軽薄で場当たり的なしろものばかりが並んでゐるやうでは、足が向かなくなるも自然の理。

そんなものは週刊誌で充分である。


いつの頃やらん、学歴の無い僻地出の大部屋役者が、その劣等感を補完のつもりにや、浮世を知る窓として週刊誌を愛読してゐると豪語してゐる様に、「しょせんその程度の知恵か……」と哀れに思ったものだが、そこにも當世の出版文化の程が、浮き彫りになってゐる。


當今の出版不況は、出版屋みずからの知恵の無さにも、一因がある。



──と、憎まれ口をきいてゐるうちに、はや夕暮れ。



少し散歩に出やうと道に立ったが、休日のこの時間は行楽帰りの人々がゾロリゾロリと歩いてゐるはずなれど、全国で1000人以上が熱中症で倒れ、うち一人が亡くなったと云ふ今日は、さすがに人影もない

まだ歩いてもいないうちから、渋扇を持つ手がじっとりと汗ばんできた。


──明日の予定が、はや決まった。
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