1000系に後を託して引退した、東京メトロ銀座線01系車両の一部を再利用した自販機が、溜池山王駅の改札外コンコースに設置されてゐる。
01系が登場したのは昭和59年(1984年)。
その01系が銀座線から引退し、一部は地方鉄道へ転職し、またその一部は自販機の部品となって、第二の人生を歩み始めた。
音量が小さくてよく聞き取れないが、現役の乗務員の吹き込んだ音聲が、常に流れてゐる。
通りがかった若い男女連れが、その音聲に足を止め、男のはうがスピーカーに耳を当てて、その言葉を聞き取らうとしてゐる。
01系が登場したのは昭和59年(1984年)。
ポイントを通過するときに車内灯が一瞬消灯するのが“名物”だった旧式車両ばかりの銀座線に、ステンレスボディーの新型車両が登場した時の衝撃は、現在もなんとく憶えてゐる。
その01系が銀座線から引退し、一部は地方鉄道へ転職し、またその一部は自販機の部品となって、第二の人生を歩み始めた。
音量が小さくてよく聞き取れないが、現役の乗務員の吹き込んだ音聲が、常に流れてゐる。
通りがかった若い男女連れが、その音聲に足を止め、男のはうがスピーカーに耳を当てて、その言葉を聞き取らうとしてゐる。
二人が去った後で、私は投入口に硬貨を入れながら、ふと思った。
人も物も、
朽ち果てるまで働き続けなければ生きられなたい現代の真実を、
この自販機は象徴してゐるのではないか、
と。
それがすなわち、これからの「令和」といふ時代だらう。