昭和に生まれて平成を駆け抜けた車両が、ここでもその使命を終へやうとしてゐる。
東急8500系──長生きしたよなぁ、といふのが私の印象。
幼少の時から見飽きるほど見續けてゐるので、余計にさう感じる。
ここまで長生きの理由として、ずっと後に誕生しながら先に引退して“9020系”となった2000系や、さらに後輩のニ代目5000系といった「置き換へ新車」は登場したものの、その度に“オトナの事情”で増備が中止されて、引退がズルズルと先延ばしにされたから、と聞ひてゐる。
私が田園都市線沿線の町で初めて一人暮らしを始めた時は、終点は営団(當時)半蔵門線の水天宮前まで、その後に東京都心を地下で通り抜けて埼玉県の奥深くまで直行するやうになるなど、全く思ひもしなかった。
それも“先延ばし”にされたゆゑなるか。
見飽きるほど見てきた8500系のなかでもっとも印象的だったのが、伊豆急行線へ転職した先輩8000系を模した一編成。
當り前に見てきたせいで、冩真に撮っていなかったのはさすがに不覺。
その伊豆急行版も先頃に廢車となり、昨年にふと虫が知らせて慌てて撮ったがために構図の惡いこの↑一枚が、私の手許に残った唯一の記録。
廢車を免れた仲間はすでに地方鐵道へ転職し、または海外へ飛んでゐる。
だが、海外組は別として、地方鐵道で第二の人生を“走って”ゐる姿を見に行きたいと思ふほど、私は東急8500系に思ひ入れはない。
やはり、長くその姿を見過ぎてゐたせいか……?
しかしながら、發車時に特徴的な高い音を發するモーター音が、高速になると爆音に豹変してグイグイと力走する様は、いつ乗っても樂しい。
それも充分に樂しんだので、まう名残惜しさはない……、
はず。