「6人分のお昼を買って、ギャラリーまで来れるかしら?」
西も東も分らない、言葉も通じない、さてこれからどうしたものか、思案に暮れていた私に、別なところにスティしていて、すでに仕事に取り掛かっている娘から連絡が入った。
娘たちは、郊外にある「KUFA」 という場所で、インスタレーションの製作中なのだ。(写真)
製作クルーはアシスタントの学生を含めて6人、そのお弁当を買ってきて欲しいという。そんなこといったって、KUFAっていったい何処なの? どこでお弁当を買ったらいいの?、とは思ったが、「OK」と電話を切った。
「さて、ユーロで最初の買い物だ」
張り切って旧市街の商店街に出たが、店は何処も閉まっている。あいにく日曜だったのだ。日本みたいに、ちょっと歩けば「コンビニ」なんてことは考えられないドイツのこと、休みの日にお弁当を買うなんて至難の業。
ようやく見つけたキヨスクで、ハンバーガーと飲み物を六人分買った。
さて、「行き先」だが、分っているのは住所と名前だけ。 こういう時はタクシーに限る。
ところが、いくら待ってもタクシーは走ってこない。車はたくさん走っているのに、タクシーそのものが走っていない。待つこと30分あまり。
あきらめて、キヨスクに戻った。
「タクシーを呼んで欲しいんだけど」、勇気を出して頼んでみた。今度はおじさんが、すぐに電話をしてくれた。間もなくやってきたタクシーで、ようやく最初の目的地に無事到着。
颯爽? とお弁当を持って現れた私を見て、「 なかなか やるじゃん」と娘。(それはそうだよ、タクシー捕まえるのが、どんなに難しいか、あなた知らないでしょ)
後で分ったことだが、この街には「流しのタクシー」はない。タクシーに乗りたければタクシー乗り場(駅前にあった)まで行く。タクシーを呼ぶには、共通番号「22222」をダイヤルし、相手に自分の居場所を伝える。
(そもそも自分の居場所が分らないん人は、どうしたらいいのかしら・・。)
滞在中いろいろな場面で感じたのは、ドイツ人の合理主義だ。無駄なことはしない。流しのタクシーにしろコンビニにしろ然り。日本で叫ばれている「サービス」が、はたして本当に必要なものか、考えさせられた。