秋の実・その2は真っ黒なヒオウギの実です。
暑い夏の日差しの中で、濃い橙色に赤い斑点のついた花を咲かせているのはヒオウギです。
ウイキペディアより借用
それが、この季節(11月)になると、全くの別人のような顔になります。
それが下の写真の黒い実です。なぜか呼び名も「ぬばたま」となります。
「ぬば」とは黒い色を意味する言葉で、黒い色の玉、すなわち「ぬば たま」です。
実の色が黒いということから「ぬばたま」は、「黒」「黒髪」「夜」「闇」など
「黒いもの」を表すときの枕詞(まくらことば)として使われます。
ぬばたまの夜の更け行けば 久木(ひさぎ)おふる 清き河原に 千鳥しば鳴く
万葉集 山辺赤人
ぬばたまの夜のふけぬれば、巻向(まきむく)の川音高し 嵐かも疾(と)き
万葉集 柿本人麻呂
人工の光 のなかった時代「夜」は今私たちが思う「闇」とはまったく違う、
恐ろしいほどの「漆黒」だったのでしょうね。
その「ぬばたま」の実は、ご覧のように「漆黒」です。
花のないこの季節、私はこの実を「茶花」として使っています。
「古代の闇は、まさに黒という色によって塗られているというべきもので、
「黒(ぬば)魂(たま)」という名称は、十分に畏怖すべき聖性を備えたものでした。
闇は恐れやおののきを決定的にするものでした。
それは、神秘さであり、畏怖であり、威力でした。」(中西 進 万葉の花)
ぬばたまの 夜は深まり 雨音の高し
これって、眠れない夜の実感なんですが、これじゃあ 人麻呂と同じですね!
ぬばたまの 眠れぬ夜の 雨音の高き
これで どう?