テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

大河の予感に……涙す。

2010-05-17 23:10:33 | ブックス
 ふぅ~、やっと若葉が美しい五月がやってきた東京・多摩地方から、
 こんにちは、ネーさです。
 高尾のお山も目に優しい常盤色~!

「こんにちわッ、テディちゃでス!
 きぶんはァ、えんそくゥ!」
「がるぐる!ぐるる~っ?」(←訳:虎です!おやつの予算はっ?)

 遠足……なつかしい響きですわ。
 そして、ここにもまた、懐かしいような、切ないような御本が一冊……
 さあ、涙を拭うハンカチを用意して、
 活字マニアの皆さま、本日は、こちらを、どうぞ~!


 
                   ―― 暁英 ――



 著者は北森鴻さん、’10年4月に発行されました。
 副題に『贋説・鹿鳴館(がんせつ・ろくめいかん)』とあります。
 なお、『暁英』は『きょうえい』とお読み下さい。

「もふッ! ろくめいかんッ!
 テディちゃ、きいたことォあるでスよッ!」
「ぐるがるぐるるる!」(←訳:明治の有名な建築だよね!)

 ええ、そうですね。
 明治の、初頭と言ってもよい頃かと思われますが、
 一人の英国人さんが明治政府に雇われ、
 はるばると海を越え、日本にやってまいりました。

 ジョサイア・コンドルさん、この時まだ25歳。

 現代ならば、大学を卒業して間もない一青年が、
 新生日本の建築界の未来を背負うべく、
 建築学の教師として、
 官営の建築事業の責任者として、
 遠い異国からの招聘に応じ、
 赴任してきたのでした。

「ふァ~♪
 じだいろまんッ、でスねッ♪」
「ぐるぐる~がるるる!」(←訳:坂の上の雲みたい!)

 列強に追いつけ追い越せ!の当時の日本と、
 古い日本の面影を愛するコンドルさんと、
 変化頻りの帝都・東京で生きてゆかねばならない人々と、
 海外で、
 或いは国内で、
 この新しい国の運命を握ろうと謀る人々……。

 襲いくる嵐(テンペスト)を予感しながらも、
 コンドルさんはこの国を離れず、見捨てず、
 歴史の闇と立ち向かおうとしますが――

「それでッそれでッ?」
「ぐるぐるがる!」(←訳:波乱万丈だ!)

 その先は……わかりません。

「ふァ??」
「がるっ?」(←訳:ええっ?)

 悲しいことに、著者・北森さんは2010年1月25日、
 逝去されました……
 よって、この御本は物語としては未完なのです。
 謎は謎のまま、
 コンドルさんたちのその後も書き記されぬまま、
 北森さんは亡くなられてしまいました。
 題名が付けられていない章もありますし、
 最終的な推敲もなされていません。
 ストーリーは半ばで、途切れてしまっています。

 それでも、この御本の、なんと魅力的なこと!
 明治という激動の時代、
 強さも弱さも持つ登場人物たち、
 謎と、静かな恐怖と、うねる闇の力。
 完結していたなら、
 北森さんの代表作品になっていたであろうと 
 私たち読む者は疑いをいれません。

「ぐすんッ……かなしィでス……」
「ぐるる~……」(←訳:無念です……)

 たくさんの御本で
 私たちを楽しませてくれた北森さん!
 御冥福を祈りつつ、
 ひたすら感謝を!
 貴方の御本が、大好き~!!

「ほんとにィ、すきッ!」
「ぐるがるぐる~!」(←訳:もっと読みたい~!)

 未完であるとはいえ、
 活字マニアさん、どうか一読を!
 コンドルさんが愛した懐かしい日本を、一目なりと~!
 
コメント
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