テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

星と水の世界より。

2010-08-11 23:21:18 | ブックス
 ひっさびさの日本名作劇場へ、ようこそ~!
 こんにちは、ネーさです。

「こんにちわァ、テディちゃでス!」
「ぐる~る!」(←訳:虎で~す!)

 お盆休みにほぼ突入?の本日は、
 もはや古典!な名作を御紹介いたしましょう。
 こちらを、どうぞ~!


 
                ―― 夜叉ヶ池 ――


 
 著者は泉鏡花さん、表題作の『夜叉ヶ池』が発表されたのは大正2年でした。
 画像の講談社文庫版には、『夜叉ヶ池』の他に、
 『海神別荘』『天守物語』も収録されています。
 3作品とも、鏡花さんの戯曲としてはとても有名な、
 代表作とも言える作品ですね。

「やしゃがいけェ……なんだかァ、なまえがァ、こわいィ~…」
「ぐるるーるる?」(←訳:ホラーなのかな?)

 ホラーでしょうか、
 ファンタジーでしょうか、
 それとも純愛物語なのでしょうか。
 
 時代は現代――つまり作品が書かれた大正の当時、
 場所は越前国大野郡鹿見村琴弾谷。
 人々が夜叉ヶ池と呼ぶ池には、
 美しいお姫さまが棲んでおりました。

「きれいなァおかたでスねッ♪」
「ぐるがるる!」(←訳:本当の姫さまだ!)

 夜叉ヶ池の主、白雪姫さま、
 現在、大恋愛の真っ最中でございます。
 お相手は、白山の剣ヶ峰千蛇ヶ池の若さまと申しまして、
 お似合いのふたりであることよ、と
 姫さまの近習たち、
 若さまの近臣たちも、
 微笑ましく見守っているのです、が……

 障害が、ひとつ。
 姫さまは夜叉ヶ池を離れられませんし、
 若さまも剣ヶ峰を離れられません。
 
 姫さまが夜叉ヶ池を離れたら、
 たちどころに怖ろしい大津波が起こり、
 村里は水の底に沈んでしまうのです。

「ひめさまァ、かわいそゥ~…」
「がるぐるるっ?」(←訳:なんとかならないのっ?)

 はるか昔に、人間と交わした約定が破れたなら、
 姫さまはすぐにでも剣ヶ峰へ飛んでゆけます。
 夜叉ヶ池のほとりの鐘楼、
 その鐘が決められた時刻に撞かれなかったら、
 もはや姫さまを縛るものはなくなるのですが……。

「こいするゥふたりをォ!」
「ぐるるがる!」(←訳:応援したい!)

 『夜叉ヶ池』『海神別荘』『天守物語』は、
 初めて鏡花さんを読む方々に
 最適な作品であると思います。
 文章の表記が旧かな遣いですので、
 慣れないうちはびっくりしちゃうかもしれません。
 でも、仮名に慣れさえすれば……!
 
 鏡花さんの紡ぐ、冴え冴えとして美しい水の世界が
 読み手の心をつかみます。
 ヒトならぬ者たちが
 楽々と飛翔する異界の夜のものがたり――
 
「ゆめのォようなァ~」
「がるるるぐるがる!」(←訳:夢じゃない世界へ!)

 『夜叉ヶ池』より、一節を引きましょう――


   《人は、心のままに活きねばならない》


 夏のお休みに、ふさわしい御本です。
 ぜひ!
    
 
コメント
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